nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鳥インフルエンザから被害をなくすために 養鶏場での対策を確認してください

10月も下旬になり、鳥インフルエンザ講習は防疫措置を確認する県職員向けが多くなり、被害が広がることがないような対策を再確認しているように見えます。 19日には千葉県や山梨県富山県で県職員や畜産関係団体が参加して処分の方法や防疫服の着用方法等を確認しています。 このうち富山県の講習会では、にわとりのぬいぐるみを使用して重さを感じる実践に近い研修を今年も行われているようです。 さて、その鳥インフルエンザも心配される時期になり今月4日北海道ではハシブトガラスから高病原性鳥インフルエンザの検出が確認されています。 亜型はH5N1で昨年から続く型が検出されています。 12日時点の農林水産省発表の野鳥からの検出はこの1例のみですが、既に環境省は死亡野鳥等調査を強化した対応レベルは2(早期警戒期間)として検出作業を進めています。 農場でも野鳥の糞便を見ると思います。 もしかするとウイルスが含まれているかもしれませんから、無関心ではなく、その糞便を踏み付けて作業員が歩き、どこに向かうのかと考えて農場周りの消毒(消石灰)散布をするといった、先を意識した管理をしていきましょう。 そして、農場内で野鳥の死骸を発見した場合素手で触らず密閉度の高い袋に入れて処分方法等を市町村役場に連絡してください。 北海道の担当者は「養鶏場にハシブトガラスを近づけない対策が重要」と言います。 また、道内で70万羽が殺処分された養鶏場責任者も「カラスに厳重注意する旨全農場長へ通達した」と言います。 今年は、ハシブトガラスに対した警戒対策を聞くようになりました。 昨年度の野鳥からの検出のうち、5割はハシブトカラスの感染でした。特にハシブトガラスは肉食性(雑食性)であるため、保菌し衰弱した野鳥を食べて感染したとも言われ、肉食による影響があるのではないかとされます。 渡り鳥が去った春先でもしばらくは検出され続けていることもあり、弊所の獣医師は国内で静かに感染し続けているのではないかと見ています。 実態はわかりませんが、ハシブトガラスは農場周辺で見る野鳥の1つでもあり感染リスクを持つ可能性もあることなどから今年は昨年以上に意識されています。 実際鶏舎内にハシブトガラスが侵入することはまずありません。鳥インフルエンザの多くは何らかの経路や媒介をして侵入しているとみるべきでしょう。 ねずみかもしれませんし、猫といった動物もあるでしょうが、人が媒介するのではないかと意識することも大事です。 人は鶏に一番近い場所まで関わる事ができ、ねずみや猫と違い、感染させないという信頼度も高いことから、人はあり得ないと見られがちです。 でも鶏舎に入る時、その長靴、手指消毒の有無といった大事な遮断方法を確実に守っているはずという前提での信頼度の高さなはずです。 では、本当にそうなのか、鶏舎を見て確認するしかありません。 人が多く働く養鶏場では人の意識はまちまちになりがちです。 十分にその重要性を話しても通じないということもあるでしょう。 その要因を知り、皆さんの農場の危害を再度分析してみてください。 野鳥の糞便を踏むリスク、鶏舎出入り口で遮断できているのかということ、人の行動から見えるリスク等 堆肥舎の金網の有無やそこに立ち入る作業者の靴はどこに向かうのかという意識と交差汚染。 ゾーニングとも言いますが、人の流れを可視化して検討することで危害を察知して改善するという方法もあります。 闇雲に消毒するのも良いでしょうが、人の流れから遮断できる方法を模索すると作業員の方の業務負担を小さくすることもできます。 器具にお金をかけることも良いでしょうが、大事な点は1つで「作業が簡便である」ということに尽きます。 簡単にできるような仕組みを作ることで、作業の漏れをなくし、危害を遮断できるという発想が一番の効果を持ちます。 履き替える・汚染エリアをなくす・汚染しないような歩道を作るといったことです。 是非考え検討してください。 当たり前に畜産現場上空を飛来しているハシブトガラスは、今年は危害の要因とみている農場もあります。 では皆さんの農場ではそのカラスは危害でしょうか。 その点から考えてみましょう。そしてその先の方法まで将来像を描いてみましょう。 きっと農場で出来る方法を思いつくはずです。

鶏卵供給が戻りつつあるようです 相場はどうでしょうか

全農鶏卵相場は10日3連休明けの相場発表を行い、東京、大阪、福岡の各市場で5円安い相場になりました。 東京ではM規準値を290円としており、13日までこの取引値になった持ち合いになっています。 10月に入り上昇する時期でもある中、久しぶりの珍しい現象になっています。 過去を見ますと、令和3年の10月も同じような下降相場になりました。この時期は令和2年度の大流行期から回復が進んでいた時期です。 2021年10月1日の相場は東京M規準値は220円で始まります。しばらくは持ち合いとなりますが、約半月後の14日に10円落ちとなります。その後26日に5円落ちとなり、 2021年10月最後の取引日29日は15円落ちの205円となりました。 回復が続き供給が上向いていた時期と新型コロナウイルスによる需要側の弱さがあったとはいえ、年末に向けて相場低下は驚くものでした。 現在は、新型コロナが5類移行になり隔離といった制限をするものはなく日常に近い生活をする時期になり、外食、旅行、インバウンド、流通店やコンビニ店、ドラックストアそれぞれは来客が多くなり企業業績も良いものでしたから、 一概に同じ状況とは言えませんが、回復が順調に進んでいるという現実には変わりありません。 供給の産出基準とされる餌付け羽数を見ますと、全農7月の餌付け状況では前年比103.4%と昨年を超える餌付けが5月以降続いています。今年度は昨年より多い数字で推移しており、供給は順調に進んでいます。 この先も前年を上回る餌付けが続いていくと見込まれますので、供給は更に改善されていくと推察され、消費者の皆さんには欠品を生じさせない安心した供給が予測されます。 今年は猛暑が多い夏でしたが、例年通り大玉は減少傾向が見られましたが、猛暑が終わった9月下旬以降は鶏に対して過ごしやすくなる日が多くなり回復も見られ、サイズ別の供給過不足は見られませんので、全サイズ安定した状態になりました。 テーブルエッグ向け供給は更に改善が進んでいきます。 また鶏卵の輸入も7月実績を見ますと、4262トンで前年比166%と大きく上回ります。 ブラジル産殻付き鶏卵1821トンで先月より少ない状況ですが、これは輸入して消費していく時間にずれがあり、一般的に通関してから2か月から3か月先に使用するものと言われますので、7月通関分は9月から10月頃国内で何らかの形で消費されていくという状況です。 そうなると、9月通関分で11月か12月となると推察され、10月以降は国内消費が一段落する1月頃以降の消費と見込まれることで輸入は10月以降更に少なくなると予想されます。 年間通関実績を見ますと令和4年の殻付き卵は59トン程度(前年比6%)と令和3年の反動減でしたが、今年は8月までの累計で4550トンとなり規模の大きさに違いがあることがわかります。報道があったように今年は国内供給に不安定要素があることで大手加工メーカー等は輸入量を大きく増やしたことが数字に表れています。 加工向け供給も不足分を輸入で補うことで国内での製品不足はだいぶ改善された夏であったと言われます。この先も不足なく供給されていくことで、鶏卵加工は安心した商品製造が可能になるでしょう。 では、この先鶏卵相場どのように進んでいくのでしょうか。 現在290円の鶏卵相場は急激な低下はないでしょう。これは供給が増えていっても需要側も例年通りの消費が期待できるからと予測できます。 しかしながら需要は今の状況で供給が釣り合うような感じになっているように見えます。 参考になるのは令和3年の相場推移になるのかもしれません。 令和3年10月の月平均相場値は9月と同じ213円でした。これは10月に15円下がったことで9月の平均値を同じになったということです。 では11月はと言えば平均207円と5円下がります。12月は3円上げた210円で終わるというものでした。 今の相場を見ると9月の月平均値は292円で、10月本日時点292円と5円下げたことで同額となります。 鳥インフルエンザの影響も令和3年もありましたから、今年はわかりませんが加味してもどのようになるのでしょうか。 大事な点は、相場の推移を見て予測するのではなく、供給が増えていくことで相場がどう変わるのかという視点です。 先ほど話しましたが、餌付け羽数は順調に増えていきます。つまり6か月後は成鶏舎で最高のパフォーマンスで農場を盛り上げてくれるわけです。 そう考えると、年明け以降は需要低下から相場は落ち着き、通常の養鶏時代が訪れる可能性があるということです。 つまり、供給が安定しやや過剰になる時期が来年にはある可能性が否定できないということです。 今の相場290円は通常ない値段です。さらに言えば今年の相場も通常あり得ない値動きです。 特殊な1年であると考えると、皆さんの農場はこの先通常運転になる時期に何をする必要があるのでしょうか。 お金が潤沢に入るから、要らない物を買い込み経費として計上したい、今は不要だが新車を入れて農場に箔をつけたい、人をもっと潤沢に入れて規模が大きいことを示したい等思惑があるかもしれません。 でも大事なことはそこでしょうか。 これから養鶏の秋から冬の時代が来るのであれば蓄えて(必要な物にお金を投下する)、やがて来る春を迎えるための時期と考えることが出来るのではないでしょうか。 皆さんや先代さんはそのような養鶏の四季を見てきているはずです。 長い春が続いているのであれば季節はやがて変わるということを知ってはいるのでしょうが、忘れてしまうというところもあります。 明日も、来年も春は続くと考えてしまうところもあるでしょう。 鳥インフルエンザへの対策も急務になりました。今は両輪で取り組む時期になります。 どちらかのみを考え実行するような時期を超えています。両方を見ながら農場を運営していくことになります。季節は秋になりました。養鶏の四季は何でしょうか。 皆さんの農場はまず何をしていきますか。 相場はこの先も安泰ですか。

人の意識と農場衛生対策 通り一遍な話で通じる時代ではないということ

10月になりました。鳥インフルエンザへの心配、消毒の方針といった農場対策が話題になります。 9月から今月にかけて鶏舎への取り組みを強化している研修も多くなっています。 それは県単位、畜産団体単位、個別農場単位と大きさ様々ですが皆さんの意識を切り替えていただくそんな研修なのだと感じます。 さて、農場を見てお話しする個別農場研修では鶏舎敷地から鶏舎内部までを歩きながら問題点と課題を見つけながらのロールプレイング形式で一緒に考え対策を共有しながら意識を向かせていく研修をしていきます。 農場入り口を見て、どこかに問題点があるのか、柵があるならばこの柵でどの程度の野生動物が侵入防止期待できるのか、それでよいのか。 消毒設備はどうか、自動噴霧器(ゲート式か手動式か)があり人が対応しやすいのか、それとも消石灰帯を作る方が利便性が良いのか。 鶏舎敷地内では水はけの悪い箇所があるならばそれは野鳥が羽休めしやすい場所になるのか。その穴はどうするのか。 金網はあるのか、目の大きさ・穴あき、材質から見て劣化しやすいものか、そして補修しやすいかという視点。 手指足の消毒設備があり、動作を行いやすい位置に配置されているのか、交差汚染のリスクはあるのか。 等約3~4時間かけての研修を行っていますが、農場によっては活発な議論をする農場もあれば、交差汚染?そんなの気にしたら人が歩けないという方、意識というがそんなのできるわけがないという方等様々な反応があります。 鳥インフルエンザを業界が意識する10月ですが多くはまだ警戒する領域に至るところはほとんどないというのが個人的な感想です。 これは、自農場にウイルスが入るわけはないという過信や昨年まで被害がないという経験則もあるでしょう。 だから今は警戒する時期ではないという結論なのかもしれません。でも研修は発生話題がある前には終えなければなりません。それは発生真っ盛りの時に農場に来て研修やどこかの会場で皆さん集めて研修するということはできません。 そもそもそんな時期に行って集まるような暇はないはずです。また農場に部外者を入れたいと思うところもないでしょう。 だから発生がない今しかないのです。 今ではないという農場と今しかできない研修。両社の思惑がズレていることはお互い分かりますが、でもそうしなければならないのもまたジレンマでもあります。 だからこそズレているとわかっていても大事な鶏を守るために両者時間を割いて研修をしていますので、互いに実りある内容としたいと思うはずです。 最近は、衛生対策に基本やネズミ対策といった通り一遍の話だけで、侵入防止をするとかどのような方法を模索するかというところまで至らないという話も聞きます。衛生対策の多くは弊所ではなく管理獣医師や県単位の研修から受けると思います。 対策箇所の範囲が広すぎたり、具体策が十分示されないという内容が浸透しないという話も聞き、農場展開する際に従事者に説明できず浸透しない、意識が高まらないということもあるようで、お客様からは更に深堀して説明したり、ロールプレイングしてより具体的・体感的に意識したりと工夫を求めることが多いと感じます。 集団研修は座学が基本になるため体感的に理解を深めることはできません。知識を得る習得場所になるため、受講者の理解度でその農場への展開度が変わります。このため農場への理解度が十分に深まらない・理解が浸透しない・意識改善が進まないという流れになると感じます。 人を介して展開する課題の1つでもあります。 今日は人の意識と農場衛生対策という話をしますが、先ほどのように人を介しての農場衛生対策はその教え手次第で変わるということを知っておくと展開方法がわかります。その視点でご覧ください。 鳥インフルエンザに限らず農場へ鶏病を入れないという対策には、全ての方がすぐにできる飼養衛生管理基準があります。30項目以上ありますがそんな難しいものではありません。一番の難点はそんなものできるか・すべて網羅してやるかという意識の在り方だけです。 農場HACCP認証をお持ちの方はわかると思いますが、飼養衛生管理基準をすべて適合させるためにこの法令にはこの作業が該当すると言ったリストを作成すると思います。これにより基準をすべて満たすことを自身で確認でき漏れがないことを知るわけですが、認証を持っていない農場の場合、多くは家畜保健衛生所からの自己点検シートから探していき漏れを見つけるだけになります。そして、そうでない場合なぜそうしなければならないのかという理由や目的、知識がないため無理だ・無駄だと自己解釈をしてしまうという場合があるという点です。 ここで意識が求める基準よりまだ到達していないということになるのですが、多くはその通りの理解はしてくれません。 その理由に鳥インフルエンザは心配だが、うちは大丈夫という過信があります。それは昨年まで感染していないからという自負があるからです。 だから意識が高まらないわけですが、発生するかどうかは過去の例で解決はできません。昨年まで対策をして発生した例はいくつもあります。そして十分と思っていても疫学調査からここに課題がある、金網が壊れている、そもそもない、堆肥舎の共用があるといった指摘を受けて初めて課題があることを知ります。発生がないから安泰ではなく、たまたま感染がなかったということもあります。そして安全対策の漏れは誰も指摘はしません。それは指摘できる人がいないからです。法令に満たない時はチェックシートで確認できますが、施設の漏れは目視や客観的に見ることが出来る人でないと、農場作業の方やその管理者と同じ視点になりおかしいをおかしいと気づけないのです。 だから第三者の視点で指摘するわけですが、農場内でそれをするという場合、まずは知識が必要になるということです。つまり知識が十分なければおかしいという箇所を見つけることはまずできません。多くはまあそんなものでしょうとか、そもそもおかしいとわからないと言うことにもなります。 知識は自分で情報を得るか、研修に参加して得るという方法が一般的です。恐らく弊所のブログから得るという方もいるでしょう。 研修やブログの場合座学が基本になっていると知ると、自身がどれだけ理解したか測ることが出来ないということを知っておくと良いでしょう。 鶏を飼育する問題集があるわけではありません。自身で知りそれを理解できてそれを磨くという工程が必要です。人に教える時知っているから教えるではなく、教えるその内容まで十分知っていなければただの説明になり要点が見つからず、相手は聞きません。 そうなると意識を高めたいと思っても相手に伝わらないのです。 最近通り一遍の話で通じないという点はここに課題があると感じます。聞き手の理解が高まっていないということです。その状態で無理に広げるので広がらないと感じます。 最初の話になるロールプレイングで話すとどうでしょうか。 自身の農場の話題です。身近な話ですから分かりやすいはずです。 後は教えての腕次第になるわけです。 鳥インフルエンザの季節だからこのような話もしますが、でも皆さんの農場への展開話はこれ以外にもあるはずです。 ねずみの対策、生産量改善の方法と検討、飼養管理の見直しと様々な問題にただ説明し理解していると思っていたら何もできていないと感じることもあるでしょう。 その要因には意識が高まらないからと結論付ける人もいますが、そもそもそのような作りや風土にしているのか。発信側がそもそもどうなのかという視点で見直してみてください。 鳥インフルエンザの季節だからこそ、農場の展開方法にかけている視点を見つける良い機会でもあります。 今年も大きな被害が想定されるというようなニュース記事も散見されますが、私は皆さんの衛生意識は昨年より格段に向上していると研修を通じて感じています。 恐らくひどくなるような年にはならないと思っていますが、油断はできません。 不安が始まる年末から早春までご苦労が続くことと思います。 消費者の皆さんに国産鶏卵を安心して食べてもらうためにも私たち生産者は今年も万全な対策でこの季節を乗り越えていきましょう。 買ってくださる方はいつもの店舗に鶏卵が十分にあることを期待しているはずです。 その10月は、消費者の皆さんが楽しみにしている「たまごフェスin池袋2023」が昨年に続き行われます。卵かけご飯の食べ放題が人気で昨年も大盛況でした。 たまごが高いから買い控える、高いのは困るという話も聞きますが、でも根底は卵が好きな皆さんだからこそ、このようなイベントを待っているのだと思います。私たち生産者も鳥インフルエンザで被害にあって被害者だと思うでしょうが、生産したその先には待っている消費者の方がいるということをフェスで感じていただきたいと思います。たかが生卵4,5個食べているだけでしょう。と思うでしょう。でもその4,5個を美味しく頬張る皆さん方の姿は生産者から見ると確かによその鶏卵ではあり関係はないかもしれませんが、鶏卵を好きでいてくれる方々と見ると、どこかの店舗で自社の鶏卵を見つけてくれて自宅やお弁当になってオフィスで食べてくれるのだろうと想像してしまう、そんな消費者との接点が見られるフェスです。10月20日金曜日から22日までの3日間池袋サンシャインシティ アネックスB1催事場で入場無料で食べ放題は2時間1000円の入れ替え制です。きっとたくさん食べてみようという方々で熱気あるイベントになるでしょう。 消費者のワクワクを見に来て生産活動の原動力にしていただければと思います。

秋になり防疫対策も意識した飼養管理をしましょう

昨年は下旬に野鳥から鳥インフルエンザ発生が報じられいつもの季節なのか程度で秋を迎えていた農場も多かったと思います。 ですが、実際の被害は1700万羽と過去最大の被害となり毎日のように○○県の農場で何万羽が陽性となり殺処分されたという報道がありました。 最終発生は4月7日で約6か月が経過します。 もう心配する時期になります。 養鶏が盛んな県では秋に向けての養鶏研修が開催されていると思います。 今年はどのような年になるのか。 とても心配です。 さて本年度の鳥インフルエンザでは、2年連続発生した農場や、採卵鶏や肉養鶏ではない家きんからの発生もあり、猛威を振るう年でもありました。 ただ運が悪いだけでは防ぐことはできないため、出来るだけでの対策を講じていく必要があります。 他人事としてとらえることないように皆さんも準備を始めてください。 弊所でも今年度の発生を踏まえて農場へどのように防疫対策を進めていくのかというテーマの研修を例年以上に行いました。すでに8月から秋に向けての準備を進めている農場もあります。 県単位での研修もあるでしょうから、農場の方々は是非ご参加いただき皆さんの農場へ展開していただきたいと思います。 今年度の課題として埋却地の不適切を指摘する事例が多く見られました。 今年度では12の県で埋却が円滑に進めることが出来なかった事例が発生したと報道されています。 その要因には、埋却地の面積不足や埋却不適切の地であったとされます。 農林水産省は今年度の予算から埋却地の試掘に費用の半額を負担するという制度を行っています。 出来るだけ試掘いただき万が一の際には円滑な埋却ができるように農場側も準備をしておくと良いでしょう。 その埋却地ですが、意見として多かったのが不適切な地かどうかを実行する直前までわからなかったという話やそもそも広い土地を農場経営者が用意すること自体不可能であるという財布事情の話が多かったと感じます。 いずれも農場側の努力が足りていない事例ではありますが、現在の法令からはいかなる理由があったとしても農場側の準備が必須であることに変わりはありません。 つまり法令を反してでも埋却の用地を用意しない、できない、やりたくないという声にしか聞こえないのです。 報道側も被害があった農場に寄り添った内容を全国に届けます。これはあまり良いことではありません。 確かに殺処分されて無収入になることは経営にとって死活問題にはなります。 そして不可抗力での感染であり被害を受けているという認識になります。 確かにその通りだとは思います。 ですが発生したということは「なぜ鶏がいる鶏舎まで侵入してしまったのか」という視点で分析し報道をしている内容は見たことはありません。 空気感染している、ウイルスを運ぶ宿主が斃死しないことで広げる等話題はあります。 でもその被害農場から道幅数メートルの農場でも発生していないという事例もあります。 つまりすべてが空気感染し広範囲に広がり被害が広がるというわけではないという事例もあります。これは運のよい悪いで片付けることが出来るのでしょうか。 大事な点は、当事者はどうしたいのかという視点があるのか、ないのかということです。 鳥インフルエンザの事例では、被害があった場合はある土地の地主さんに話をして、畑を借地として準備し、万一の際に作物の補償もするので埋却させてもらうという農場もあります。必ず購入し放棄地にしておくだけが方法ではありません。 土地を買うというその発想の多くは、使わない地だからこそ、どうでも良い荒れ果てた地を破格で仕入れるというところに至り、結局埋却できず無駄な地を二束三文で購入し、恐らく売却もできない土地になっているでしょう。 そのような事例もあったと感じます。 ある県では昨年末に埋却した土地から異臭と周辺水源の汚染がありました。水が吹きやすい土地であったとされます。埋却のやり直しがこの9月からやっと行われるが延期になったという報道もあります。 その再埋却地も竹が茂る土地で開拓して、竹の根を切るような準備が必要になるはずです。 竹の根がフレコンバック等埋却用具に貫通したとき新しい問題に至ります。あまり良い土地ではありませんがこれ以外選択肢がなかったのかもしれません。 現在の法令から言えることは埋却地が用意できない場合の方法が明確化されていないことが一番の問題です。 県に任せるというスタンスでは今回のような膨大な埋却には手に負えないという現状があります。 一番手っ取り早いのは埋却地が不足しているのであれば農場内に埋却すべきであると言えます。鶏舎を壊し、基礎を破壊し掘り進めるというのも良いでしょう。 それは困るのであれば熱心に土地を探すと思います。 それができないのであれば借地を探し近隣との関係改善を作るはずです。 でもそれは手間であるから、二束三文の地を買う方が良いというところになるのかもしれません。 養鶏は規模拡大が進んだ産業です。 お金があればだれでも拡大ができますので、拡大した農場は信用された農場というわけではありません。 そのような農場でも100万羽規模で発生したというところもありますし、数十万羽規模では2年連続発生という農場もあります。 だから分割管理を推奨しているところもあるのですが、これも大金がかかり皆さん全てがクリアできるものではないでしょう。 そしてコストを削減した政策から見ても逆を行く政策でもあり今以上の維持費、購入費用がかかり100万羽規模農場がこれを採用しても採算悪化は避けられません。 でも土地が用意できないのであればこれを行うのも選択肢になります。 このように自身の財布事情で考えると、無理な物はできないという結論に至り最終的には国が、県がという責任転嫁の話になってしまいます。 繰り返しますが、土地の確保は養鶏家側の義務です。 でもその方法は、購入以外にもあるというところまで知っているでしょうか。 金で解決といった無駄を買うという意識では、近隣関係悪化もあるでしょうし、再開時いい顔をされないことは目に見えています。 土地の確保はとても大変なことです。 まとまった地を見つけること自体奇跡に近いものと言えます。 そして近隣との関係を薄くしていたという農場もあるでしょう。 そういう農場ほど臭いから迷惑、においや羽の飛散、ハエが迷惑と煙たがれるような農場もあります。 そんな状況では近隣に埋却地を探すということも困難でしょう。 近隣に対し理解を求めるという農場もあるでしょうが、恐らく難しく看板が掲げられて「養鶏場反対」「処理場反対」「埋却地反対」と言われるでしょう。 それを強行に推し進めた農場は残念ながら近隣との関係は今より良くなることは期待できません。 それでも理解を求めるはどういう方法なのか。 個人的には関心はあります。 養鶏は大規模化し個別の販路を見つけるような大手と遜色ない時代になりました。 だからうちは偉いのだ、だからそんな苦労すら知らない近隣とは仲良くなれるわけがないという認識では、この先も些細なことで揉めることになるでしょう。 いつもお話ししていますが、養鶏は近隣との関係が悪化した場合は高確率で更なる悪化に至ると感じます。 例外はなく、現状維持できていれば大したものと感じます。 だから京都府のような事例、栃木県のような事例が報道されます。それ以外にも地方紙レベルのいざこざはあると感じます。 今年の鳥インフルエンザはどうなるのかは誰にもわかりません。 昨年の被害のように流行が終わる時、大変なものであったと振り返ることができます。 でもそんな悠長なことを言っていては経営している側から見ても少し残念なことに思います。 だからこそ、今から農場に入れないという覚悟と、そのための方策を検討し秋から実行に移るのです。 交差汚染を知り交差汚染とは何かと考えることも大事でしょう。 先行く農場は既に勉強を終えて実行に移ります。 でも多くの農場はまだ季節ではないという意識が多いのかもしれません。 でも発生の話題が聞くようになった昨年は広い範囲に急激に広がりました。 そこから手を打っても回避できないという事例があったのかもしれませんし、その方法が構築できずとりあえず石灰散布程度だったのかもしれません。 人の意識とその方策の共有する組織と覚悟、今年も被害がない農場のはずと漠然とした意識でとりあえず迎える10月を過ごしてみるのでしょうか。 先行く農場は出来る方法を既に入手しているようです。

秋の気配が聞こえます 皆さんの農場は何を準備しますか

9月も下旬になりました。今月は鳥インフルエンザに関わる研修や人の意識を再確認する研修といったハードとソフトの両面を再認識していいただくような研修が全国各地で行われました。 私もいくつか参加させていただき皆さんと一緒に次の一手を考え行動するきっかけをご提供していました。残暑の中のご出席本当にお疲れ様でした。 さて、気づくと9月も下旬となり、朝は涼しいと感じるような季節になりセミも鳴く日中ではありますが間違いなく四季は秋へと進んでいると感じます。 草むらでは秋の虫が季節の変わり目を教えてくれます。仕事が終わりいつもの駅で降り立ちとセミが鳴く季節から変わりつつあると感じ、残暑厳しいと毎日報道されていても季節は変わるのだと改めて思います。 全農は21日次期配合飼料価格を今より2700円値下げすると発表しています。4期連続の引き下げではありますが、これでも昨年7月期の12000円引き上げを相殺できるまでの価格にはなっておらず、 まだまだ飼料価格を意識しエネルギー価格の変動を意識しなければならないと思います。 ガソリン価格は政府補助が厚めに入ることになり、現在平均価格は170円台前半程度まで下降しました、ですが補助対象にならない灯油といった、幼雛を温めるための燃料等は上昇傾向が見られます。 これは、原油価格の上昇が続いており円安と重なり、原料価格が上昇していることが要因です。 秋を感じるということは、気温も下がり始めます。 人は過ごしやすいと思いますが、ヒヨコたちは保温して体温を維持しますので、夏以上に加温する必要が生じます。 ですから、我慢しなさいとは言えません。皆さんのエネルギー価格への意識は高まるかもしれない、そんな頭が痛い中ですが、そんな9月は鳥インフルエンザへの警戒を意識する月でもあります。 昨年は野鳥からのウイルス検出があり、令和4年の大流行へと進んでいきました。 多くの皆さんは、その季節が来たのかな程度であったと思います。でもここまで被害が拡大し消費者に大きな影響を及ぼすような大惨事とも言える事態に至るとはどなたも想像できなかったと思います。 では、今年はどうでしょうか。例年同様渡り鳥が飛来する時期まであとわずかになり、すでに樺太方面では野鳥感染が報告されていて、ヨーロッパ方面や中国大陸からも7月以降報告されており飛来に心配が報じられています。 でもこれは昨年も同じでした。では今年も同じ程度の認識で大丈夫でしょうか。 鳥インフルエンザの研修では被害発生時の手順の確認や農場に入れないための研修が行われていたと思います。 でもピントこないからこそ「まあうちは大丈夫だろう。だって昨年も被害がなかったから」と言ってしまうかもしれません。 しかし、その意識だけで本当に大丈夫だろうかと皆さんご自身に問うてみてください。 昨シーズンは2年連続農場発生もありました。これを周辺の渡り鳥が原因だけで片付けてはいけません。 大事な点を意識してください。 野鳥が農場に持ち込む、ねずみが媒介する、猫が鶏舎に入り広げる・・ それは皆さん知っていることでしょうが、そこだけ知っていて安心でしょうか。 それも大事なことですが、もっと大事なことは交差汚染を意識するということです。 交差汚染?と言われてしまいますが、つまりウイルスといった汚染物が何らかの経路で鶏舎に入る人に移り鶏舎に入り込むというものです。 履物を鶏舎用と分けなさいと言うのは履物が外を歩いたものでそのまま鶏舎に入るリスクを想定しているわけです。 研修でお話しするとき、冬の鶏舎は石灰の足跡がありませんかと思い出してもらっています。 石灰の付着した履物の足跡はあらゆる箇所に置き土産のように存在していると思います。 鶏舎、靴の履き替え場、皆さん自家用車のフロアマット等 ただ汚れているようで迷惑とか、洗う際に汚れが落ちにくい、フロアマットはプラスチック製のほうが洗いやすい等といった話を伺いますが、実際は見える汚染物がこれだけ広がっているということを知ってほしいと言います。 ウイルスは目に見える大きさではありませんので、石灰を想像していただきたいと思います。 履物を鶏舎で専用の物に変わると、敷地に散布した消石灰を踏んでいない限り鶏舎に足跡がつくことはありません。 これは履き替えて遮断しているということです。 手も同じです。石灰の付着した軍手をそのまま鶏舎で使用すれば鶏舎ドアのノブ内側扉や手を付いた壁、死亡鶏を取り出すならば取り出した鶏やゲージの扉に石灰が付着していることがわかります。 これを汚れるとか、冬はそんなものと認識しているのかによって農場の衛生意識は違います。 交差汚染を意識して見ると、石灰が鶏舎にある、壁やゲージに付着していること自体良いものではありません。それは外に蒔いた石灰が人を介して鶏舎に入れたということです。 自家用車のフロアマットが汚れていると感じるならば、外の汚れが車内に入るということです。 では、どう考えるのでしょうか。 石灰は目に見えない外のウイルスを踏み歩いた足跡と同じです。ではこの履物で鶏舎に入るとどうなるでしょうか。又はその履物を鶏舎に限らず歩いた跡を見ると、鶏舎作業している方と足跡が混ざることはありませんか。 鶏舎入り口で履物を変えると思いますが、その変える場所は外の履物と混ざることはありませんか。 この視点で見てください。 ウイルスは見えないから、防疫措置をしている。消毒をしている。何もしていなくても何かしていると見えてしまいます。 多くの場合、ウイルスは存在しないかもしれません。だからこそ被害はある範囲の左右の農場から爆発的に発生しているわけではないのです。 実際には発生農場の道幅3メートルの他の農場では発生がないという事例もあります。 これは空気感染も意識しなければならないのでしょうが、そもそもそれだけを意識することで解決できると言うことでもないということです。 では鶏舎にウイルスが届く要因には他に何があるのでしょうか。 それには交差汚染を意識して見てください。 汚れが交差するところは実は危険性があるということも知っておいておくと農場では何ができるのでしょうか。 鶏舎で履物を変えるだけでよいという意識は、正解なのでしょうか。変えないリスクを知った説明なのでしょうか。 石灰のように歩いた痕跡が残るのなら履き替えるでしょう。でも見えないものであるなら皆さん本当に履き替えてくれている(はず)ではないかと思います。 消毒設備があり、きっと鶏舎で履き替えてくれるとなれば設備から問題ないように見えますが、何かが足りていないということです。 人は義務で押し付けるようなものを好むことはありません。 でも必要なことであれば押しつけではありません。そうしてもらう理由とリスクを説明して納得を得ることが大事なことです。 その説明をすることの重要性を知っているでしょうか。 ただ、履き替えろ、消毒しろ、長靴を新品買ってやるから履き替えて使えといった事実だけを話していてはあまり意味はありません。 人を信用している、人を大事にしているそんな農場でないと多くは、消毒??するよ?(多分)となることもあります。 交差汚染を意識しているということは、汚れをどこかで遮断するということです。 ただ履き替えるだけの視点で安心してはいけません。 遮断するという意識と見えないものを断ち切るという意識が本当に大事であるということを皆さんに知ってもらうということです。 人にお願いし作業している私たち養鶏業は、養鶏家と高給取りとされる幹部クラスが熱心だけでは、末端部の作業員の方々までその熱意は伝わりません。 私が感じる鳥インフルエンザへの意識は、設備の充実で解決できるわけではなく、人が鶏に近づくことのリスクを意識することが最大の防止策であると言えます。 当然ネズミや猫の侵入は防止しますが、それだけでどうかなるわけではないことは皆さん知っていることと思います。 どうか、やれ・履け・何とかしろではなく、これだけの危険性を皆さんで防いでいこうという姿勢で話してみてください。 長靴を買うからやれでは、そんなの要らないよと言われるだけです。 買ってどうにかなるわけではありません。 「意識」という、この1点をどう伝えて知ってもらうのか、この点に重点を置いてください。 10月は渡り鳥が飛来する時期に当たります。約1週間後には10月です。 時間はありません。できることをしていくわけですが、その根底は機材の充実もあるでしょうが、人への意識をどう考えていくのか。 そう考えてみてください。

9月の鶏卵相場 この高コストだからこそ生産量を維持を目指して

9月に入り鶏卵相場の動向に関心がある農場も多いことでしょう。 長い休止していた大口需要が購入再開を始めます。涼しさを感じる時期になれば消費が増えていきますから、相場に弾みがつくわけですが、既に鳥インフルエンザの被害があった農場の多くは再開しており生産活動も本格化していることでしょう。 現在、鶏卵相場最高値350円(東京M規準値)から70円安い280円で1日時点取引されています。例年9月はこの時期から緩やかに上昇を始めます。 大流行であった令和2年の相場を見ると、需要再開の9月は増羽が進んでいたこともあり9月の上昇は約15円程度までと小幅ではありました。 この流れでは年末にかけて大きな上昇は描くことはありませんでしたが、今の値段で280円ですから下がることはないでしょうからこの値段からいくら上がるのかという視点で見てみましょう。 9月は国の補助事業がいったん終了する時期でもあります。 電気、ガソリン代といったものですが、政府は10月以降も継続するように準備を進めているようです。 10月分(9月の使用分)以降は電力料金が大きく上昇することが既に明らかになっています。 これは9月の補助額が当初予定通りの補助額となる半分のみとしているため、差額分がそのまま上昇することが主な要因です。 ですから、今使用している電気代は6月の上昇があった時期とほぼ同じ額になると試算しておくと良いでしょう。 これはガス代も同じです。エネルギー価格への補助が一服したことで上昇が見込まれています。 ガソリン価格は170円台を維持するような補助をすると発表していますので、高い状況から幾分和らぐのかもしれません。 では、皆さんの農場ではこのコスト高からどのような対策を講じていくのでしょうか。 多くは出来る手立ては既に打っていると思います。だからもう手段はなく受け身でしかないという話も聞きます。 でも何もできないのでしょうか。 農場によりますが、この夏生産量を大きく下げたところもありました。 猛暑だから?そうではなく人災です。 それも成鶏舎での終夜点灯をしてそれに気づくまで数日要したことによる産卵停止です。 採卵鶏の基本を知らない農場で起きた悲劇ですが、その農場はヘンデー産卵92%まで維持していた鶏舎でしたが、終夜点灯で8%まで下がりました。 それに猛暑が重なり餌を食べません。ですから産卵押上げが非常にゆっくりとなり、事故発生から7日経過しても25%までと日齢から見ても9割回復は困難とみており、この高卵価からみてコスト以前の話になっている農場もあります。 多くの農場ではコスト削減、無駄取り、出血を抑えるといったキーワードで出費抑制を推し進めたところもあったと思います。 でも行き過ぎたコスト削減は結果コスト増にしかならず収入とのバランスを欠けてしまうという問題も生じます。 ですからこの話のように人災をいかになくすのかという点で農場を見ることが一番のコスト意識になるのだと思います。 餌代より卵価が高いは養鶏の基本で、今がその時期のはずです。 でも収入が低くなり餌代が賄えないでは養鶏の基本がなくなった農場であり危険信号が点灯したことを意味しています。 そのような状況で高コストと言っても話にはなりません。まず無意味で無駄な会話です。 それより人災をなくす努力をしなさいとなります。 農場は経営者がいて代行者(農場長等役職者)が指揮をとり作業員がいるという構図になるはずです。 最近の農場を見ると、代行者までは養鶏の基本や気づくポイントまではよく理解されているように見えますが、その先の作業員まで浸透しているのかと見ると、どうもそうではないような事例が多くなっていると感じます。 その理由に離職が多く教育をしない、理解度が低いから作業できれば良い程度の教育しかしない、基本を知る指揮者でないため作業しかできない人材しか伝承されない等農場の中のコミュニケーションが欠落しているところがあるようです。 そして、基本を知らないから、点灯して忘れてどうなるのかというリスクがわからないし、想像できないことで「残念!まあ次回気を付けよう」程度の認識しか育ちませんから、また繰り返すのです。 そんな残念な環境がある農場では収入が下がるのでコストは人一倍敏感です。でも解決策はなく繰り返すだけというところもあり、何が根底にあるのかまでわかる農場は多くないように感じます。 教育は無駄である。良く研修で質問されますが本当に無駄だから教育をしない農場は結果「農場自身が無駄」というだけで、やれあいつが悪い(人が悪い)、指揮者が無能だ(そもそも教育されていない)、高給待遇なのに成果がない(そもそも高給で優遇するほどの能力があったのか)といった責任転嫁をする経営者もいます。これも非常に残念です。 自身の任命や採用に欠陥があったのに、それを自身の責任と認識できないからです。 そのような状況ではいくら人を入れても、いくらお金をかけても何も変わりません。変わるのは人件費というコスト増だけです。 そんな農場もあります。 高コストは確かに問題であり解決したい事柄です。でもコストは物を作る時に必要な維持費でこれを0にすることはできません。 ではコストをどのように捉えるのでしょうか。出費と答えたのならば残念な回答になります。 正解はコストを最大限生かし収入を得るという視点です。 鶏の性能は大きく変わりました。ではその性能を最大限に高めるにはなにができますか。 人災を起こす組織は皆さんが考える「皆さん通る為のイベント」なのでしょうか。 それは、そもそもなくても良いイベントではないでしょうか。 9月は補助額が大きく変わり10月支払額は上昇します。では皆さんの農場は何ができるのでしょうか。 金融機関からの融資?それもあるでしょう。 でも農場の中を見てください。何か気づきませんか? その視野と気づきがあれば9月からの農場運営も安心感が増すことでしょう。

令和4年の大流行 鳥インフルエンザから学ぶべきこと

読売新聞は17日「鳥インフルエンザで殺処分した死骸、予定地に埋却できず計画変更325万羽の処理に影響」という記事を掲載しました。 その中には鳥インフルエンザが発生した26道県のうち12道県で埋却に問題が生じたとしています。 記事には地下水など環境への影響が懸念されるなどで325万羽の処理に影響があり2か月程度の遅延処理があった事例もあったとしています。 農水省によれば畜産業者に対して鶏等の死骸を埋却や処理施設を確保し都道府県に報告することになっています。その報告では全国の養鶏場のうち95%以上が確保済みと報告しているとしています。 記事では、支障があった26道県に対して処理状況を尋ねたところ予定地では死骸を処理することが出来ず、別の土地を用意したり、焼却に切り替えたとしています。 変更理由では、予定地で地下水が出て埋却することへの環境問題、面積不足、近隣に民家や河川があることによる施行規則違反、自治体による事前確認や指導不足が不十分な事例もありました。 このため今年度から農場と都道府県が事前に試掘調査をした場合には費用の5割を支援する制度を導入し、確実な埋却地の確保へ強化することにしています。 この記事を見て思うのは、農場側がいかに必要な土地を確保できるのかという点が要になっているのかというのがわかると思います。 多くの農場から聞く意見としては、農場側が必要な面積を用意できるわけがない。自治体が責任をもって県の所有地の使用や焼却をするべきであるという意見もよく聞きます。 規模が大きくなっているのだから殺処分ではなくワクチン接種をして殺処分を防ぐような新しい取り組みをすべきであるといった意見もありました。 筆者は養鶏の業界にいて思うのですが、鳥インフルエンザによる被害は確かに農場にとってとても苦しいことですから、被害者であると思いがちです。 報道もそのように報じます。確かにそうでしょう。 でも、鳥インフルエンザによる被害は周辺から空気感染して鶏舎に入り込み被害があるのか。そして農場の衛生対策は本当に充分であるのかという視点で本当に語られているのかという点です。 確かに何万羽100万羽という単位で鶏がすべて殺処分されます。鶏達の命が一斉になくなる、養鶏家の苦労が始まる、そして相場の高騰から消費者のご苦労が続くという話題になるのでしょう。 最近は感染力が強いからという理由でしょうか。2年連続して鳥インフルエンザによる被害がある農場も現実あります。 これは非常に深刻だと私は思います。 それは、感染力が強いからではありません。 むしろ農場の運営がどうなのかという視点です。 疫学調査の概要は発生があると数か月後に公表されます。その中の多くは調査時点では指摘する事項は特に記載されていない事例も見ますが、多くは通報が遅い、鶏舎の修繕が遅い、野生動物が侵入しやすい不備、従業員の靴の履き替えや消毒への対策が十分ではないといった事例も記載されています。 そして従業員の消毒への意識についてはどの調査でも記載はありません。消毒設備はある、立ち入り禁止の看板はある、記録類は整備されているといった目に見えるものは聞き取りや目視で確認できるので記載はありますが、では人はその設備を本当に活用されているのかというとそれは意識がある従事者だからしている(はず)と答えるはずです。 でも衛生対策の根本は何ですかと再度認識してみると、従事者が外部との遮断がしっかりできて鶏舎に入り作業をして汚染物を入れない、広げないという意識が根本にないと成立しません。 だから作業員は鶏に一番近いところを携わっているわけですから十分な対策が必要になります。そして野鳥や交差汚染しやすい箇所に鶏以上に近づく危険な立ち位置でもあるのです。 でも目には見えませんから、消毒設備はある(だから消毒して遮断しているはず)、立ち入り禁止の看板はある(だから部外者は入らないはず)、記録類は整備されている(だから万全であるはず)という良い視点で物を見ているという姿にも見えます。 そして2年連続繰り返す農場も存在する。 それだけウイルスが強度化したのでしょうか。そうであれば近隣農場は被害続発になるのですが、そうではないというのは何か説明ができるのでしょうか。 令和2年の大流行では確かに1農場を中心として近隣農場の被害もありました。農場の行き来がないのに道路を隔てた別会社の農場にも飛び火したという事例もあります。 では4年度もそうであったのか。大きい農場道隔てたよその農場も発生したという事例は多くはなくむしろ少ないと感じます。 この差は何でしょうか。そして2年度被害があった農場は4年度も発生したのでしょうか。 どうも十分説明できない被害発生事例が多く見えます。これは渡り鳥のウイルスルートが違うから、弱毒化しているから等理由をつける傾向もあります。 確かにその通りなのでしょう。でも説明が十分できないことから「ある可能性がある、発生経路が風の流れにより違う」では少し対策への影響に支障があります。 つまり、経路がわからないのだから機材をそろえて、法令を遵守しましょうでは、これだけ揃えたのだからやっても十分やれなくても同じと解釈してしまう従事者もいます。 発生するかしないかは運しだいということに聞こえます。 正直これは運でどうのこうのという話題ではありません。遮断できるのか、できていないのかの違いで、発生したしないの話で運という要素はありません。 ルーレットゲームのように赤が出る、黒が出るという話と同じではないのです。よく対策しているから黒しかない、不十分だから赤になるという話です。 感染するかわからないなら、今までと同じで十分だろうという意識も芽生えます。その意識は渡り鳥もいない何もない時期であればいいでしょうが、このような緊急時ではどうでしょうか。 従業員は皆さんの指導方法で大きく変わります。まあ冬は家保がうるさいから石灰撒いてね。消毒していてね程度の説明では、冬はそれなりにしていれば良いという認識しかありません。 農場責任者は鶏が殺処分され無収入になるという危機感はあるでしょうが、従業員はわかりません。「大変だね。それよりも25日は給料日だね」という認識です。考えの視野が違うのです。 ある養鶏家は県の養鶏会合で2年連続発生した農場の経営者が出席し涙を流したという話をしていました。 その涙の意味は分かりません。 無収入になったという苦しさの涙なのか、わからないけど発生が継続したという苦しい涙なのか。 でも疫学調査概要を読むと、その農場には鶏舎に不備がある、作業員と交差汚染が予見できる施設には防鳥ネットがなく野鳥が出入りしていると指摘されていると、その涙は何だろうと個人的には見えます。 野鳥は正直どの農場にもいます、カラス、セキレイ、スズメといった物は農場に限らずいますし、周辺や上空を飛行しています。ですから野鳥がいるというのは普通のことであり、だから何ですかということです。 問題はその野鳥からどのように鶏舎にいる鶏へ移っていくのかということだけです。野鳥は鉄砲で四六時中追い払うわけではないからです。 先ほどの話ではないですが、では従業員はその鳥インフルエンザによる被害をどのように想定していたのでしょうか。 経営者が従業員として働く農場は多くはありません。恐らくほとんどは監督者である責任者にその仕事をさせているはずです。 では、経営者は無収入の怖さはわかるにしても、では責任者は、作業員は同じですか。ということです。 一昔と違いその農場で鳥インフルエンザが発生すると周辺数キロは鶏卵出荷は止まりますが、以前ほど長い期間にはなりません。多くは翌日か翌々日には再開できているはずです。 ですから収入停滞は短期間であり問題にはなりませんから、厳しい目をする養鶏家はいません。 でも2年連続発生してしまうということは少し課題になると考える養鶏家も少ないですがいますが、多くは残念ですが他人ごとになります。 だから大変と思うが関心がないのです。「あの農場が被害にあった!うちはどうなのか?」という視野はほとんどありません。多くはうちは感染しないと信じているからです。 組合でその農場を守るような議論はなくそれよりも時期の鳥インフルエンザはどのように対策をしますかという話題になるでしょう。 今回のように埋却に問題が生じたということは、私たち養鶏家も考える必要があるということです。 国がやるべき、ワクチンを使用すべき、そもそも短期間での殺処分は不可能であり感染遮断の意味はないという意見。 多くは養鶏家の意見ですが、本当にそれは正しい意見なのでしょうか。 法令を変える力があればよいのでしょうが、陳情が精一杯でもあります。 陳情は議員さんの間では聞くという意味で法令へ何か働きかけるという意味ではないそうです。 であれば従うというのが現実です。 不満は不満で様々あると思います。 でも今は何も変えられません。 であれば従い十分な対策をするしかないのです。ほかに選択肢はありません。 厳しい話ではありますが、埋却地に右往左往している農場もあります。 筆者もそのような農場を見ます。 でも十分な土地を用意して埋める準備は農場がする。それが法令で示した義務です。 それが用意できないから、県所有地を使うべきでは少し残念です。 そんなものできない、お金がない、脆弱な経営では難しいという法令以前に自身の財布事情を話していてはどこまで行っても平行線になり意味はありません。 やるしかないのです。 それができるのか、できないのかという違いです。できないから土地を借りたり(緊急時は借地として借り埋却する地主との契約)して負担を小さくするという発想があり実行している農場もあるのです。 できない理由はあまり意味を持ちません。 令和5年の発生はどのようになるのでしょうか。 2,4年と大流行でした。偶数年だけなのか。そうでないのか。 あまり時間はなくなりました。皆さんの埋却地は適正な土地でしょうか。 そして、それ以前に発生させない対策を構築されているでしょうか。 埋却は発生させない意識を持って取り組むことで使用する土地にはなりません。 人の意識という課題、そして土地の確保。 短い時間で多くの課題にどう向き合っていきましょうか。