2023年を振り返る 次期配合飼料価格は上昇となります
皆さんの町はクリスマスを迎え年末を感じさせるような街並みではないでしょう。私の地域の商店街では数年ぶりの歳末恒例現金つかみ取り抽選会を開き賑わいを見せており、今年も終わりなのだと感じます。 その令和5年の鶏卵相場は高騰と呼ぶにふさわしいほどの高水準で推移しました。 鳥インフルエンザが大流行している1月は前年止め市からいくらでもない値段低下で新年を迎え、深刻な供給不足で始まります。 1月の平均鶏卵価格は280円(東京M規準値)となり、上昇はどこまで続いていくのか、防疫措置に重点を置きつつ関心もあるそんな新年を迎えたことでしょう。 その後相場は最高値350円(4月)まで上昇し、飼料価格もわずかとはいえ下げが続き、燃料代の補助事業もあり幾分生産活動に余力が生じたという話も聞きます。 振り返りますとこの春先が最も収益的に良かったと答える農場も多かったような記憶があります。 夏以降、鳥インフルエンザ被害を受けた農場が順次回復を図り、鶏卵需要にこたえる準備が整います。 しかしながら、加工向け需要には殻付き輸入卵の増加という話もあり、まあ消費全体3割のうちの数パーセントの話でしょ。とあまり関心がない農場も多く見られましたが、 年末は加工向け需要は不発に終わるような相場に至ります。12月平均相場値は248円です。相場を見ますと5月頃までが最高値となり以降は下落が続いていくという構図になり、少し前ブログにてお話ししましたが秋以降の相場値について例年とは異なる傾向になるのではないかというお話をしたような展開に至ります。 12月は反転があるのではないかと想定していましたが、下落がやや続いている状況で加工向けは既に需要が一段落しているような状況となりました。 本年の止め市は27日(水)となり、持ち合いが続くとなれば月平均価格は248円、年平均額は307円となります。 これも過去にない高水準の平均価格になり、昨年冬から続いた鳥インフルエンザの被害がいかに大きかったことを改めて感じさせます。 2024年の初市は5日(金)です。8日間の滞貨玉となり供給が十分であれば例年100円、150円と大きく下がることが一般的です。1月は我慢の月とも言います通り、相場と採算ラインの乖離が大きいことから我慢して耐えるような1月と言われるのでしょう。現在245円ですから、145円かそれを少し下回る程度と予測できます。通常のスタート相場から見ればまあそんなものでしょうと感じるかもしれませんが、次期1月からの配合飼料価格は上昇となり2800円の値上げになることを発表しています。 燃料価格の補助、電気代の補助といった生産活動に必要なエネルギー費用はまだ抑えていますので、まだ良い年始になるのかもしれませんが、原油相場は上下を大きく動きながらの緩やかな上昇を見せています。補助がありドル安に進んでいる中でもガソリン価格が右肩下がりになっていないという現状は、中東情勢と輸送船の迂回運行によるコスト増が見込まれ、石油関連株はこれを見越して上昇しているぐらい、値が上がることを投資家は見ているようで、その通りであれば消費する私たちは応分の値上げに対応しなければならないという不透明な状況です。 鶏卵の生産も順調に回復しています。恐らく昨年被害あった農場のほとんどはこの時期までには回復して生産をしているはずです。一部はまだ模索中で来年以降に再開を目指すという農場もあるようですが、全体から見れば小規模ですので、回復しているとみています。 では、来年の生産はどのように戻るのでしょうか。 皆さんもご存じの通り、本年夏以降順調に続いており、来年は昨シーズンの被害から回復が春先には完了し通常生産量に戻ると見ます。 つまり鶏卵相場の上昇はまもなく終えるということになります。夏以降は今年度の被害状況により変わるでしょうが、2018年か19年ごろの相場展開になるのではと想像しています。 年平均は180円、190円程度となり、例年相場になる可能性もあり、その中の飼料価格の上昇は、少しコストが高くなり経営に不安もあるかもしれません。 では、仕方ないと考えるだけで何も考えず経営に邁進することも良いでしょうが、この先を見据えて農場生産の在り方やそのための勉強、幹部職員の育成等必要な準備をこの時期から始めることも大事になるのではないでしょうか。 鶏の生産能力を引き上げるのは鶏自身だけではなく、環境を作る人が重要です。 環境が良ければ、生産量も上がるというのは皆さん知っているはずです。 昔「鶏舎がきれいな農場は生産量も高い」という言葉も聞いたことがあると思います。これは古い高床式鶏舎であっても、手が行き届いているところは生産量を高く維持した高生産を続けている農場も多いと言うものです。 養鶏は、鶏卵の値段は餌代より高いので生産量があることは経営の基礎部分を守る役割を持ちます。だからこそ高生産を目指し種鶏メーカーや生産農場は目指しているのです。 餌を削減するだけではどうにかなるというわけではありません。両輪の姿勢が重要です。 そのためには、その管理をするための知識を得る、そのための管理を行うという人側の意識がとても重要です。 多くは、人にお金をかけるほど無駄であるという方もいますが、収入を失い出す農場ほど、コスト削減のため、目に見えない成果となる人への投資を疎かにしてしまい、見やすい餌代、箱代、燃料代といったものに全集中して、生産低下に気づけない・他も下がっている・鶏が悪いので仕方ない等他に責任があると解釈し、大事な点をいつまでも見失ったまま年月が進み、気づけばほか農場より劣化していることに気づけず、鶏が悪い・仕方ないという風土になり改善するという意識すら無くしてしまう農場になります。 お金がある今であれば、もったいないという基準は高いはずです。改善は今しかありません。でもこれをしない、人はいくらでもいるから入れ替えれば何とかなるという考えもあるでしょうが、入れ替えが激しいところほど、人は派遣で良い、実習生で良いとなると、技術伝承することもなくなり、何もとりえのない農場に転落する農場もこの先数年後から散見されると予測しています。他人の話でしょうというでしょうが、その状態がわかるのは自身ではなく他人が見てわかるものです。では皆さんの農場はどのような状態でしょうか。 点検して振り返ることも良いのではないでしょうか。 2023年ももうすぐ終わり、クリスマスが終われば謹賀新年ののぼりがあちらこちらで見られるようになり、もう正月だなと肌で感じるところまで来ています。 何も考えずに暮れだなと感じるのか、来年は今年とは違う年になると予測して動くのか。 ハッキリ言えることは、この年末相場は通常のことなのか、来年はどう予想されるのか。 年末を考え、人に時間や知識等充てるのも良いかもしれません。 本年は養鶏研修も多く開かれ招かれました。どの研修会も鶏の飼養管理より、更なる経営改善の考え方、人の意識、教育の必要性を大事にされたものが多かったと思います。 来年3月下旬以降は、新規採用者の新任研修も通常通り開くという養鶏場もあり、人を大事に育て農場を発展させるという取り組みが多くなったと感じます。 沢山の出会いが今年もあり、私にとっても勉強になり、参考になりとお互いウインウインの研修会でした。本当にありがとうございます。 来年も更なる発展に寄与できるよう努力をしてまいります。まだ鳥インフルエンザの不安が消えない時期ではありますが、皆さんの管理は昨年以上の気づきがあり応用が備わっているはずです。 皆様のご発展をお祈り申し上げ、本年最後のブログとさせていただきます。
鶏舎の空気環境改善実験が大分県の養鶏場で行われています 空間除菌という意識
富士通ゼネラルの子会社と日田市の養鶏場が12月から1年程度の実証実験を行っています。 この実験は、子会社エアロシールド(富士通ゼネラルの子会社)が、n-UV技術と呼ばれる波長254ナノメートルの紫外線を照射してウイルスや細菌の拡散にダメージを与え浮遊ウイルスや細菌を不活化させるという特徴があります。 この技術を搭載した機械本体は空間上部に設置することで、水平照射をするので人に誤射する等の影響を与えないという特徴を持ち、今回畜産動物にも空間環境改善ビジネスを展開する予定です。 実証実験の背景には鶏舎環境の特に冬場の換気は室温を保つために換気を十分に行うことができず、食鳥では育成率低下、食鳥処理場での廃棄率浄化を引き起こし、経営に悪影響を及ぼすことから、ワンヘルス(人獣共通感染症の課題)の実現を目指す実証実験を実施することとしたと言います。 報道写真では、天井近い上部空間に一定間隔に照射機械を設置し水平方向に紫外線を照射し浮遊ウイルス、最近の不活化をするという新しい取り組みです。 鶏舎の換気は、入気をして排出をし空気を入れ替えますが、外気温が低い冬は、少しの時間でも鶏舎温度が下がります。皆さんが湯船につかり暖かいお湯に冷えた水を入れると、入れた付近からお湯が冷えるというイメージをするとわかりやすいかもしれません。 ですから、最低換気をする農場が一般的で、農場によってはアンモニアガス臭が強いとしても害はないと説明する人もいますが、本音はガスによる被害発生する確率と保温する餌代等のコストの大きさを天秤にかけて、ガスの被害が低く、コスト低下によるメリットが大きいという判断でガス臭による影響はないと説明しているように見えます。 鳥インフルエンザを想定した空間除菌を意識する農場もありますが、多くは安定化二酸化塩素を使用した除菌をするという農場もあります。 これは細菌やウイルスの細胞膜を酸化させるという手法です。 この手の除菌は試験室レベルでは有効ではないかとされますが、空気が流れ隙間があり空間が多い鶏舎では十分に効果を得られているのかわかりにくいとされます。 このため、入気口に安定化二酸化塩素を塗布し入気時に鶏舎空間の除菌を試みるという農場もありますが、広さとその投入量から効果については十分議論されていないという場合もあるようで、効果については十分わかりにくいという事例もあります。 また飲水投与用二酸化塩素もあるようで、給水のピックラインに計算上必要な濃度を溶解させて不断給水するというものです。効果があるとされるようですが残念ながら効果があるのかわかりません。 実際この空間除菌をしていた農場でも鳥インフルエンザが発生したという事例があるようですので、空間除菌の効能以外にも違う懸念があるという視点が必要です。 ただ、今回の空間改善実験は、鳥インフルエンザ以外にも、空間に浮遊する鶏病にも有効であると思われます。空間除菌に疑問を持つ方も多いと思います。 大事な視点は、例えば鳥インフルエンザは鶏舎の空間に浮遊しているので感染するのかという疑問を持つということです。 鳥インフルエンザは何らかの経路を経て鶏に感染し被害を発生させます。では被害農場の数メートル離れた異なる会社の養鶏場ではなぜ空気感染していないのだろうか。 でも発生した農場もあります。 その差は何でしょうか。多くは堆肥舎の共用、死亡鶏処理機の共用という農場もあります。 これは空気感染で広がったのでしょうか。 つまり、鳥インフルエンザといった経営に大きく左右される場合空間除菌だけで防ぐという視野ではあまり意味がないということです。 空間除菌で期待できるとすれば、換気不良による細菌の不活化させることで、鶏が受けている免疫低下から要らぬ感染や疾病を防ぐという視点です。 繰り返しになりますが、換気が悪くなる冬は換気による弊害を心配するために換気がおろそかになり、それにより浮遊する細菌類や埃が多くなりそれが、鶏へのストレスになり鶏病誘発したり、生産性の弊害になることがあります。 これを改善する期待があるのが今回の照射機械になるのです。 換気を意識するという考え方はとても大切なことです。先ほどお話ししましたがガス臭あっても問題ないという意識でリスクをとって生産を維持したり期待するという行動は万一の時大きな影響を与えます。 換気と保温は反する関係であることは皆さん知っていることです。 であれば、リスクが小さいこのような環境改善方法もあるでしょうし、二酸化塩素も期待できるのではないでしょうか。 鳥インフルエンザは、感染すれば高病原性であればこのような方法があってもなくても残念な結果に至ると感じます。ですからこの改善は鳥インフルエンザ対策ではなく、冬等換気が十分ではない時期や高温管理等換気を極力なくす飼養管理には一考できるものと言えます。 鶏を飼養する多くの農場は、ただ鶏を飼養しているわけではありません。コストを意識しその結晶が高温管理、換気抑制による保温という方法になります。鶏舎は換気して飼養する前提で作られているため、その逆に取り組むということです。 それは正しいことなのかという話題もありますが、今の価格で供給するためにはコストを意識して対策を講じるしかありません。肯定するわけではありませんがこれが現実という姿なのでしょう。 であれば、呼吸器病を防ぐために何ができるのかという視点で見れば、今の作業を変えず病原菌を少なくするという視点からこのような考えもありでしょう。 皆さんの農場も、換気と保温の考え方に矛盾と難しさを感じると思います。仕方ないことと片付ける農場もありますが、また違う方法もあります。 では、その方法は換気を勧めることなのでしょうか。これが一番安上がりではあります。でも保温という矛盾が生まれます。 このような機械を使用することに疑問があるという方もいるでしょう。効果はどうなのか、信用できるものなのか。 だからこそ実証実験をしているわけです。この実験は24年11月まで続きます。 これにより、空気環境の浮遊菌数、アンモニア濃度のデータ収集と分析をし、外部機関と協力した有効性評価を実施するとしています。 この結果を待ち、冬のみならず今の高温管理へのリスク低減の選択肢の一つになればと思います。
卵アレルギーに対応した鶏卵が開発されつつあります 付加価値を知りただの鶏卵から脱する新しい取り組み
熊本県は県内養鶏場に対し消毒命令を発令しました 季節の到来になり一層の警戒をお願いします
鳥インフルエンザの発生が確認されました 令和5年度最初の発生となります
野鳥から鳥インフルエンザが検出されています 最大限の警戒をお願いします
11月も下旬になり、季節はクリスマスへと進んでいます。 街中の洋菓子店やテレビ広告ではクリスマスケーキの予約を勧めるのぼりやCMを見るようになりました。 鶏卵相場を見ますと、10月から生産量の回復からじりじりと下降しており、17日時点東京規準値は250円(2L、L、M、MS全て同一価格)となり生産回復から小玉の流通が増え、すでに回復している農場のMや2Lクラスも潤沢な供給になっていると推察され、昨年から今年まで被害にあった農場が順調に回復していることがわかります。 また加工向けの供給もわずかとはいえ輸入鶏卵に置き換わり国内の消費過程に変化が生じているようです。 昨年と違い、ケーキの予約が大変という話題もありませんので相応の受注に対応できると自信を持っている店舗が多いと感じ、購入する側にとっては12月に入っても商品選択に余裕ができ困らないという利点がありそうです。 そのような11月ですが、すでに野鳥の感染事例が報告されており、北海道から九州まで広い範囲で検出されており全国的な警戒が必要になっています。 本日時点農場への感染事例はありませんが、通例では野鳥感染が報じられると時間を置かず農場への感染事例が報告されます。積極的な防疫対策を進めてください。 さて、ブログでもお話ししていますが、鳥インフルエンザを意識する対策として消毒・交差汚染意識・人の意識維持が大事になっています。 昨年の大流行を経験した農場では今年は今までとは違う取り組みをしているところもあり、被害の甚大さ、被害を受けた後の再開へのご苦労もありただ消毒していれば良いというレベルではないという意識の高さがあります。 皆さんの農場も、昨年と同じ意識ではなく、昨年以上の意識を持って取り組みを続けてください。 今年度の養鶏勉強会では、交差汚染について議論する機会がとても多いと感じました。 消石灰の消毒と、踏み込み消毒の徹底程度の議論が多かった昨年とは違い、明らかに人への意識が高まった内容が多かったと思います。 人は意識が高いので感染させることはないという性善説に基づいていろいろな場所へ出入りできるのですが、自在に動き回れるということは「感染源を持った場合はまき散らす」という危険性があるということまで知る人は意外と少ないと感じます。 あるいは、そのようなことはしないから検討する必要がないという、従業員との関係性悪化を防ぐという忖度的な意識がある農場もあります。 どちらが良いのかはわかりませんが、大事な点は鶏舎にウイルスを入れないことにつきます。 野鳥が鶏舎に侵入して被害が発生するということは、通常管理をしている限りあり得ません。これは金網を設置しているし不用意に扉の開放をしていないということが一番の理由ですが、それ以外に人が外からの汚染物を持ち込まないという遮断するという行動があります。 長靴の履き替え、手指消毒、衣服を交換するといったものです。 それぞれとても重要な行動ですから、農場従事者の方々にご指導をしていただきたいと思います。 今年度分割管理を導入し再稼働をした農場もあります。被害を半分、それ以下に低減する効果が期待できます。そのために莫大な資金を投入し、動線を分割し集卵設備を新設したり、車両・人の分割した鶏舎での共用や入場を禁止して徹底した農場運営をすることで初めて効果が期待できるとされます。 100万羽規模の農場が分割管理を導入したとしても、コストを削減した費用をあっさりと吸収しコスト増に至るという話も聞きます。 採算面から見ても100万羽規模程度でも採算が合うというところまでには至りません。それだけのことをしても被害を最低限に抑えたいという経営者の思いに従業員皆さんが答えることができれば良いと思います。 そのためには、農場を分割しているのだから、鶏舎に闇雲に立ち入らないという意識、仲間だからこそ困ったときに分割している鶏舎に安易に侵入するという意識、車両や器具が故障したからという理由でその鶏舎で使用している重機や車両を安易に貸し出すという意識。 何のために分割し分けているのかという視点が現場にないと、大金かけて導入しても意味を持たないという残念な結果もありえます。 皆さんの農場はワクモの発生はありますか。最近は新薬の登場でだいぶ寄生虫被害が拡大するという話題は聞かなくなりましたが、ワクモが1号舎で発生したとき時間を置かずに隣の2号舎、3号舎へと伝播するという事例はありませんか。 この要因には、器具の共用や人の共通往来があって広げるという事例が多いと感じます。 長靴にワクモが登り、その履物が隣の鶏舎でまた歩き回る。手指の消毒はしていても作業着はワクモが付着しておりその状態のまま隣の鶏舎に入る。 ワクモが付着した軍手を使用して隣の鶏舎で修理作業を行う。 いかがでしょうか。人が遮断していない場合ワクモの事例で考えてもいくつも不備というか意識の低下による被害拡大が想定できます。決して大げさな話ではありません。 でも人は汚染を広げないという性善説に基づいて鶏舎に出入りをしている。 そう考えると、ねずみや猫や野鳥を鶏舎に入れないという取り組みだけでは解決できないということがわかります。 では皆さんの農場ではあと何をすべきなのでしょうか。 例年通りの消石灰の散布で十分でしょうか。たまに次亜塩素酸ナトリウムを敷地周辺に散布するだけで解決できるでしょうか。 人は性善説に基づいて、この先もこのままで安心でしょうか。 農場には当たり前のことを何も疑わずに、当たり前ではないという事例が多くあります。それに気づき対処するのが本当の農場運営ではないかと思います。 鳥インフルエンザによる被害は殺処分による無収入だけでは済まされず、再稼働によるコスト増という経営的負担、欠品を生じさせたことによる出荷先からの取引規模の低下や停止ということもあります。 相場が高いときは相場取引でも十分採算は合うと思います。今がその時期です。 でも相場が例年のような年平均190円や210円程度になった時、相場取引や加工取引だけで採算が合うのかどうか。 しばらくは金融機関からの借り入れで当座の資金に不安はないでしょうが、低相場時代が長くなる養鶏業では、それによる農場の体力低下が少しづつ進んでいき、最終的には廃業を決断するという事例もあります。 ご自身の農場では関係ないではなく、発生した農場も関係ないと感染するまで思っていなかったはずです。問題はどのように発生させないのかという点です。 低相場と飼料価格の高騰で負債が膨らみ経営破綻した養鶏場が多く発生したのは2021年から22年にかけてのことでした。その22年から23年初頭にかけて深刻な被害が発生した令和4年の大流行。 その大流行から回復した多くの農場は高相場のおかげで大変とは思いますが、何とか軌道に乗せることはできたと思います。 その軌道は慣性の法則のようになにもせずとも、その良い状態を続けていくことができると信じていると思うところもあるでしょう。 でも鶏卵相場は最高値350円を頂点に現在はいくらになっているでしょうか。 この先年末まで350円を超えるような相場になるのか。なったとしても翌1月の相場はどれくらいの低下になるのか。 出荷抑制が発生したことによる出荷先への信頼は、不可抗力とはいえある程度そこなっているという現実があります。 他農場の製品に置き換わり、規模が小さくなったとはいえ取引が継続できただけ安心と言っていられるのか。 相場値が下がった時、その損害の大きさに初めて気づくということもありでしょう。 大事な点は、そのようなことはないと思い平穏に暮らしていくのか、最初からウイルスが侵入させないようなシステムを作り活動していき万一の場合でも悔いが残らないような管理ができていると自信を持って言える運営ができるのか。その考えだと思います。 研修では真剣に聞き入ってくださった農場関係者の方や地域団体の方々。その皆さんの真剣さが農場を変えていく原動力になっていると感じます。 多くは今年も消石灰散布をボチボチやろう。うるさいから石灰撒いておこう。そんな意識の農場も残念ながらあると思います。 被害を出さない農場運営を考えた時、皆さんはどのような運営が必要になると感じるでしょうか。 今日のお話から、昔からの考えだけではなく今の時代に合う考えを見つけてみてはいかがでしょうか。