nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

台風14号の影響で停電による被害 宮崎県都城市と新富町の養鶏場

宮崎県は、台風14号による県内の被害状況をまとめ公表しました。 それによれば、宮崎県では採卵鶏2農場、都城市において採卵鶏6万羽の死亡、児湯郡新富町において4万羽の死亡があったと報告しています。 また高千穂町では牛4頭が土砂崩れにより死亡し、子牛1頭が不明になっているとしています。 その他、JA宮崎中央家畜市場の牛舎や競り場、事務所が冠水しており復旧作業を行っているとしています。 今回の台風は、勢力が読み切れず十分な発達がないともされましたが、急速に発達し9月17日には910hpaまで下がり、猛烈な台風になりました。 9月18日は鹿児島県の本土に930hpaで上陸し熊本県を通ります。 陸上を通ることで勢力が弱まるのですが、19日6時には福岡県を通過し970hpaまで上昇していきますが、宮崎県では非常に強い勢力で通過しており、大雨特別警報が発令されました。 これにより停電、断水、土砂崩れといった大きな被害がありました。 このうち、都城市の養鶏場では12.5万羽を飼養しており、このうち6万羽を超える鶏が斃死したとされます。 報道では、18日午後に停電が発生し、19日朝に関係者が見に行ったところ停電により換気用ファンが作動せず、熱死や酸欠による影響があったとされます。 被害額は約2800万円になり、社員一丸となり、養鶏を続けていくと話しています。 養鶏設備の多くは電力に依存しており停電が発生した場合の多くは温度や換気の制御を喪失します。 ですから、発電機を備え万一の際は発電機が稼働し鶏舎の設備機能を維持していく取り組みを進めている農場が多いのではないかと思います。 千葉県でも2019年9月台風15号による影響で高圧電線の鉄塔が倒壊し停電が発生しました。この台風では市原市のゴルフ練習場の鉄塔が倒壊し住宅損傷の話題もありました。 養鶏場では、ウインドレス鶏舎では発電機未設置の農場では今回のように、鶏の熱死や酸欠が発生しました。これは採卵鶏に限らずウインドレス豚舎でも同様な事例がありました。 またオープン鶏舎等経年劣化した鶏舎では、建物の位置ずれが発生し給餌機が走行できないぐらいの歪みが発生しました。 この台風では、停電が長期になったこともあり、携帯電話の電波塔のバッテリー電力が消失し携帯電話も不通になりました。また発電機がある農場でも燃料の備蓄が長期停電を想定しておらず、 発電停止になるところもあり、従業員が燃料の買い出しに行くのですが、給油所も停電により販売できない状況で確保することも困難でした。 このような教訓から、農場への発電機設置の補助や給油所の停電時の発電設備の導入、携帯基地局の補助バッテリーの強化といった災害への取り組みに変化がありました。 鶏が死亡し鶏出す作業は経験した方でなければ分からない大変さがあります。 私も5万羽の死亡を取り出す作業に参加したことがあります。 鶏を出しても狭い通路では鶏を搬出する作業は困難でした。廃鶏かごに入れる作業もしましたが、かごには生きている鶏ではないことから、補鶏するのも違和感を感じます。ペースがつかめず悪戦苦闘していた記憶があります。 狭い通路では、一輪車に乗せて排出するにも他作業員がいるため通行しにくいことや、通路に鶏を置きほかの作業者がそれを回収する作業をして作業者同士が接触しないような工夫をしていましたが、 廃鶏するために取り出すような手軽感はありませんでした。 外部業者、協力業者を集めて何とか作業を終えた記憶があります。 積まれていく10トン車に白い鶏達が重なるように積み込まれ、大変なことが起きていると感じました。 気丈にふるまう経営者の方でしたが、休憩の時間には下を向き疲れているようでした。 和気あいあいと作業しているわけではありませんから、休憩時間はまるで通夜のように静かでした。 その後も心配です。熱による鶏の被害はその先も深刻になりがちです。 経験から、かろうじて生き残った鶏達も翌日、その次の日と残念ですが一定数は斃死していきます。 産卵はおそらく5割もないでしょう。 急激なストレスから産卵を停止してしまうのです。 回復も鈍く、残羽数に対しせいぜい7割といった所で推移し、日齢相応の低下になっていくと感じます。 多くは、採算に見合う収量ではなくなるため、予算があれば早期に淘汰し次に期待したいということになるでしょう。 この先暮れにかけては、鶏卵相場も上昇していく時期ですから、できるだけその恩恵を受けたいところです。 被害にあわれた農場の皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。 台風は自然災害で毎年あるものという認識かもしれません。 ですが、その勢力は少しづつ強いものになるとも言われます。 日本近海で台風になり翌日にはやってくるとも言われ、事前の備えが難しくなってきている状況です。 発電機があれば、停電がなければと後悔される農場もありました。 ですが、昔に戻ることはできません。 だからこそ、悔いのない管理をしなければなりません。 補助事業があれば、発電機の導入やリースも良いでしょう。 燃料を確保するために、ひいきの給油所に発電機を入れてもらうことも一案です。 参考までに時間はかかりますが、手動で給油もできます。くわしくは給油所に聞くとよいでしょう。 また発電機は万一のための設備のため、いざ使用するときに発電できなかったという事例もあります。 定期的な点検も必要になります。少しの手間を惜しむために大きなマイナスを受けてしまうこともあります。 災害が発生しないと、設備は良好なのかわからないでは少し心配です。 まだこの先も、安心できない時期が続きます。 台風災害に対抗できるための方策を今から見つけていきましょう。