nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

ハエ対策と養鶏 効率よく行うこと

最近は、畜産農場と周辺住民との距離が近い地域が増えており、臭気問題以外にも「衛生害虫」問題も良く聞かれるようになりました。

 

ハエは人に不快感を与えますが、同時に家畜にもストレスを与えます。


よく言われますが、病気の伝播もあり「たかがハエ」と言えない時代でもあります。
伝播によるものとして、ニューカッスル病、鶏インフルエンザやコクシジウム症はハエが広めていくという話は有名です。


そのハエですが、近年は畜舎に通年発生することも珍しいことではなくなりました。
これは鶏舎の近代化が大きいといえます。温度が適切に管理できることで家畜に寒さによるストレス軽減に貢献していると同時に、ハエに対しても繁殖の通年化ができる環境を与えているからだと言われます。


実際鶏舎を拝見すると、ウインドレス鶏舎は真冬であっても20℃を超える管理が可能で暖かく、眼鏡が畜舎に入ると数秒で曇ります。


適度な温度と湿度、新鮮な鶏糞やこぼれ餌の変敗等があり、強く風が起きていないことで飛散しやすい環境が整っているといえるのです。


ハエは、繁殖力が強いことで有名です。代表的なイエバエは成虫まで8日から14日程度と短く1個体の産卵は3回程度と言われ約300個の卵を産むと言います。


嗅覚はほかのハエに比べ劣り遠い場所のエサには誘引されず広範囲に飛び回るとされ、明るい場所へ移動することから、薄暗い鶏舎から脱出し近隣住宅地等へ移動することで問題化します。


また、鶏舎内では殺虫作業等により有機リン系殺虫剤に強い抵抗性を持っているとされ、ピレスロイド系にも抵抗性を持ち出していると報告されています。


それでは、対策は何が一番効果的なのでしょうか。


よく言われますが、除糞が一番とされます。これは、繁殖地を畜舎から出すことで発生を抑えるからだと言えます。しかし近年の鶏舎構造では、スクレーパーで上手に鶏糞をかき出すことが出来ないため結果、残ってしまい繁殖するケースや集糞ベルトの隙間で繁殖するケース等除糞による効果を実感できない施設があるのも事実です。


一般的に集糞後は床面に幼虫が多く歩く場合は床面の清掃を行い排出することも重要です。先ほどの通り成虫まで8日から14日ですので、幼虫時点で4日程度経過しています。
まもなく成虫になる状況では大変危険です。


頻度を上げて集糞すべきと言えますが、作業の点から見ても難しいのが実情で、薬剤による駆除に切り替えることになるのでしょう。


薬剤は多種ありますが、大量発生時には追い付けないため日ごろから実施することも検討してはいかがでしょうか。しかし、耐性の問題もありますので同じ薬品の使用は避けて、効果が減じたときは違う種類に変更する等効果を持続できるような仕組みが必要です。


成虫への羽化を防ぐ薬剤もあります。経験から見て効果はあると思いますが、近年の鶏舎構造と鶏糞回収頻度から見て散布する機会はないのではと感じています。


それよりも、回収した鶏糞を早く処理することが重要ではないかと思います。


たい肥場はハエとウジが多く発生しています。これは運び込まれた鶏糞に大量に含まれるウジが右往左往しているからです。


先ほどの通りウジの状態では残り4日から8日で成虫になるカウントダウンに入っています。速やかに処理したいのですがどのようにしましょう。


それは、切り返し又は急速発酵機へ投入することでしょう。
発酵熱で、鶏糞では60℃を超えて70℃くらいまで温度が上がります。成虫は50℃で40秒で死滅します。ですので早めに対策することでたい肥舎からの発生を抑えることが出来ます。


薬剤散布はその次に考えるべきでしょう。


いずれも、対処療法になりますが、本当の対策は、発生させない環境を作ることではないでしょうか。


鶏舎内では、鶏糞の話をしました。しかし鶏糞以外にも発生源はあります。それは、こぼれエサに水が混じって変敗したものに集まる餌場やピック水樋に餌が付き腐敗する等
少し鶏舎を歩くだけでもその機会に遭遇します。


つまり、清掃するときにこのような場所を見つけ片付けるのも発生を抑えることが出来るということです。


温度を変えるや餌をこぼさないというのは難しいものです。しかし、原因が分かれば対策は講じることが出来ます。スクレーパーもかき出す刃に位置合わせを行うことで、
かき出し度が変わるはずです。何もできないではなく、できないが対策は打てるという考えで物事を見ると解決策が生まれるかもしれません。


畜舎とハエは関係を断ち切ることはできません。しかし抑え込むことは可能なはずです。完璧な駆除ではなく、迷惑かけない駆除を考えていくのも重要ではないでしょうか。


今日お話したことはすぐに実行できることは少ないかもしれませんが、考えるきっかけになるのではないでしょうか。

千葉県でのたい肥化計画の現状 養鶏版

千葉県は、家畜排せつ物の利用の促進を図るための計画に従い平成37年(令和6年)を目標として、家畜排せつ物の利用の促進を図るための取り組みをしています。

 

ライブドアブログにも関連記事を書きましたのでnogutikusanで検索して参照ください。


1、現状はどうでしょうか
平成26年2月の家畜飼養頭数(羽数)から推計するとふん尿は314万トン/年と推計されています。現在はそれよりも多いはずです。
今回は採卵鶏についてお話をいたします。


家畜排せつ物の処理設備は採卵鶏では94%と高い施設で設置をしていることが分かります。
また、施設でたい肥化等の処理をしている家畜排せつ物の割合は98%とほぼすべてをたい肥化している状況がわかります。


では、そのたい肥はどのように流通するのでしょうか。
採卵鶏では、83%が販売しています。無償で譲渡するのは11%で量販店等納品は0.1%と僅かです。
つまり、近隣農家さん等に販売するか無償で譲渡しているのです。

では、無限に販売を続ければ安泰といえるかといえば少し心配もあります。


2、課題はなんでしょうか
採卵鶏は、特に北東部と南西部に多く飼養されています。つまり、たい肥の供給量が過剰な状況で地域内外でのたい肥の新たな活用方法を検討する必要があるといわれます。

北東部では銚子市旭市匝瑳市香取市をさします。南西部はいすみ市君津市市原市をさします。


また、一部の畜舎とたい肥化施設での悪臭問題があるため、当該施設に臭気対策を講じる必要があると報告されています。


設備の内訳から、採卵鶏はたい肥舎での処理が最も多く248施設、攪拌付き乾燥装置38施設、密閉式コンポスト29件とどこの養鶏施設も多額の資金を投じて処理施設を採用しています。

ですので、他所も臭いのだからうちも臭くても仕方ないと言える状況ではありません。


むしろ、投資されていないところが悪臭の根源と言われかねない状況になりつつあります。


製品の為に投資するのは自然なことですが、今の時代は最終処分まで費用を投下しなければならない時代になっています。


悪臭を中心とした環境問題への対応を強化する動きが見られます。
悪臭防止法に基づく臭気規制で、千葉県でも物質濃度規制に替えて、複合臭等に対応可能な官能検査による臭気指数規制を導入する市町村が増加しています。


現在集臭気指数規制を公表されている市は、千葉市松戸市習志野市我孫子市浦安市鎌ヶ谷市佐倉市の全域・市原市の工業専用地域以外です。


いずれも養鶏が盛んな地域ではありませんが、苦情が持ち込まれる場合市町村の議会で検討され最終的に市町村長が決定しますので、迷惑が当たり前では通用しない時代です。


また、養鶏が起因でなくても他畜産によって苦情となり決定されることもあり得ます。


うちは地元の名士だからと語る方もいます。しかし、お住まいの地域では名士でしょうが、農場が他市町村であればあまり意味のない話でしょう。

 

千葉県では、以上の経緯から耕畜連携等によるたい肥利用の推進が必要と考えていること。悪臭を中心とした畜産環境の問題への対応を課題としていると挙げています。


耕畜連携は、すでに多くの養鶏家が取り入れていますが、運搬とサービスの向上、成分表示等の品質向上、粒化・ペレット化と袋詰めによる取り扱い性の向上を挙げています。
上記では、現状解決できないと考える方も多いはずです。(既に取り入れていても、解決できないため)


このため、このような文言もあります。
たい肥の供給が過剰になっている地域においてたい肥としての利用が困難な場合は、家畜排せつ物のメタン発酵、焼却、炭化等によるエネルギー利用についても検討するとしています。


悪臭を中心とした畜産環境問題への対応として、地域住民に畜産業の意義を理解してもらうことで畜産農家と住民が良好なコミュニケーションを図るための取り組みを支援します。


環境問題が深刻である場合、脱臭装置等臭気低減に有効な技術の導入や既存設備の機能向上や設備更新等による改善を推進します。
臭気低減技術のためには、臭気指数の増減要因を解決するために、現地調査を行い新たな課題として開発に取り組むことにしています。

 

今後千葉県は家畜防疫の観点から、適切なたい肥化への徹底として、発酵熱で病原体が死滅するためにも適切な管理をする、運搬には車両が伝播する可能性を考慮して積載物の飛散防止、適切な消毒、運搬ルートの選定に勤めるよう指導をします。

 

いかがでしょうか、千葉県は採卵鶏では全国3位の飼養羽数の県ですがこのような取り組みを行っています。


養鶏に携る方々は、法規制を守ることの大事さや周辺に対する配慮が大事であり、現実問題に直面することをお話いたしました。
そのためにも、地域とのコミュニケーションが大事であって、畜産は臭いもの、当たり前の物、先に経営していて後から住宅を建設したという占有意識を変える時代になっていることが分かります。


また、不要な物にお金を投じないという考えは場合により会社の存続に影響を及ぼす可能性があることも示唆しています。
人材採用や製品販売、鶏糞等廃棄物の取り扱いと近隣とのコミュニケーション等多岐に渡り検討を必要とする時代になったのです。

農畜産物の消費行動に関する調査結果2018 鶏卵の消費動向

一般社団法人日本農業協同組合連携機構(JCA)が、2019年3月22日に発表した畜産物の消費行動に関する調査結果を発表しました。
この調査は10月に行われたものを翌年3月に公表しています。今回は鶏卵について考えて見ます。


家庭や自宅で調理する人に精肉・卵・牛乳を1週間に何日食べるのか等尋ねています。
・卵購入時の商品選び

最も多いのは「10個入りであること」55%(前年51.8%)でわずかに上昇しています。
「消費期限まで余裕があること」50.2%(前年52.3%)年々わずかに低下しています。
「特売やタイムサービス品であること」43.4%(前年44.3%)波がありますが微増といえましょう。
これらで言えることは、鶏卵はタイムセールや特売で購入するものと考えていることがわかります。


サイズによる好みも明らかになっています。
Lサイズであること12.4%(前年11.6%)で微増といえます。
Mサイズであること6.4%(前年7%)で波がありますが横這いです。
MSサイズであること1.1%(前年1.4%)でわずかに低下しています。
Lサイズは人気があり、MやMSは人気がある鶏卵でないことがわかります。


鶏卵相場2018年時点ではLサイズがMサイズより若干高いですが、1キロ5円程度の差です。1パックは平均で650から700gグラム程度でしょうから、価格差はほぼない状況です。


店舗としては消費者から人気がありわずかに金額を上乗せできる、Lサイズパック卵は魅力的でしょう。


しかし、サイズミックス卵はMやMSが混じることからサイズ卵が安価になる傾向があり人気なのも頷けます。店舗でも価格人気があるのでしょう。


その価格ですが、購入できる金額を尋ねると、20代で46.8%が100円から149円までを基準にしています。年齢が上がるにつれその割合が少なくなっていきます。


50代以降では200円から249円の割合が20%と増えてきます。いわゆる固定価格鶏卵(○○農場の卵等)の領域です。


40代までは2極化して、100円から149円までのサイズミックス卵か特売卵がこの価格帯になりそうで、サイズ卵(L、M)は200円程度傾向があることから、サイズ卵価格帯と言えましょう。この2つがほぼ同じ割合か、若干安いほうに数値が高いと言えそうです。


子育てが一段落するからでしょうか、300円以上の割合が60代、70代で5%、6.5%と2倍以上の上昇です。いわゆる健康重視(特殊卵)卵か販売所直営からの付加価値卵と
推察されます。


昔から言われた「褐色卵であること」「有精卵であること」は少しづつ減少しているように見えます。「褐色卵はありがたい」というのは、昔の話になっていくのでしょう。


その他「平飼であること」は横ばいで一定の需要がありそうです。
注目しているのは「決めている価格以下であること」が2015年以来18年は増加に転じたことでしょう。


15年は相場高騰の年でした。「物価の優等生の鶏卵に異常が」という見出しがあった時代です。18年は相場が低下しているためこのような集計は意外です。
経済的状況があるのでしょうか。


鶏卵を選ぶ基準が少しづつ変わりつつあるのかもしれません。

機能性表示食品 鶏卵が届け出されました

機能性表示食品といえば、サプリメント等が有名ですが、今回生鮮食品に分類される鶏卵がEPADHAを含み中性脂肪を下げる機能があるとするイセ食品の「機能性伊勢の卵」(届け出番号D586)が2019年3月4日に届け出されました。


ビタミンを含有する物、ミネラル等特殊な物として販売することが主流でしたが、今回のように消費者庁に届け出る機能性表示食品として、販売されるのは新しい選択肢が増えるものだと思います。


健康志向が50代を超える世代に高い傾向があることから、一定の需要があり付加価値ある価格でも購入するのでないかと考えております
(健康志向に関する記事はライブドアブログnogutikusanの畜産ブログ「消費動向調査 外食・中食と店頭販売での意識 データから見る畜産物 3月26日発表」をご覧ください。「nogutikusan」で検索ください)


ビタミン含有等珍しさがなくなっている鶏卵販売では、機能性表示食品という、表示者の責任による健康志向向け販売は新たな付加価値ある鶏卵となるでしょう。


近年は、○○さんちの卵や○○養鶏場のたまご等ネーミング卵も乱立気味です。ありがたみが無くなり付加価値と呼べるのか微妙でしょう。養鶏場近くで自販機による鶏卵販売等鮮度が高いことをアピールするのも良いでしょうが、首都圏等人口が多いところでは有利でしょうが養鶏場が近くにあることによる苦情も心配であり現実的ではありません。


付加価値販売はどちらかといえば首都圏エリアが主流になってしますのでしょうが、売店を設置したり、食事ができる施設を作るというのも皆さん全員出来る技ではありません。
6次産業化 卵の付加価値を考える 4月7日発表をご覧ください)


固定価格での引き取りが出来れば安心した経営が出来ましょうが、近年は販売先にも変化があるようにも感じます。過去からそうだから、未来も問題ないと考えるのも絶対にその通りとはならないというのが、私の考えでもあります。


やはり、固定価格を増やすためにも付加価値は絶対に外せないはずです。しかし、その方法はめまぐるしく変化し今考え出した方法も数年後それが普通となりやがて乱立するという構図が、出来上がりつつあります。


その中で「機能性食品」という、消費者からすると体に良いもので届け出ている物という付加価値は簡単に乱立できない新しい取り組みになりましょう。


常に先を読む必要がある鶏卵販売。市場価格に一喜一憂することなく生産物の一定量が「付加価値ある商品」に変わることが安定した経営に寄与できるはずです。


卵があればよい時代でなく消費者の心をつかむ時代になったのかもしれません。

 

3月の日本チェーンストア協会の発表には、畜産物は肉類は好調でしたが、鶏卵は概ねまずまずの動きでした。その中に消費者の心を掴む鶏卵があれば、「まずまずのシェア」からその商品が選ばれるのではないでしょうか。

鶏卵サルモネラ検出に思うこと

鶏卵とサルモネラは、イコールで連想される方も多いと思います。
養鶏に携る方には、「うちは関係ないよ」という方もいます。
近年はサルモネラワクチンを接種することで、発生は絶対ないという安心があることも
要因かもしれません。


ワクチン効果として、鶏の腸管におけるサルモネラ・エンテリティディス(いわゆるS.E)定着の軽減があるとされます。
ですが予防効果の一助になるもので完全阻止するものではありません。


何だ、ワクチンの話か?と言われてしまいそうですが、今日はそうでなく鶏卵の置かれた立場を近年の報道から読み取ってみようと思います。


まず、鶏舎内でのサルモネラ採材(ふき取り検査)の陽性率を見てみます。
平成17年ですので少し古いのですが、ねずみの検体からは18検体のうち5検体が陽性(発生率27.7%)で高く表れます。
養鶏場での最大目標「ねずみの徹底駆除」はここに理由があるのでしょう。


次いで、害虫が13検体のうち2検体陽性で(発生率15.3%)高く、衛生害虫は近隣に迷惑をかけるだけでなく媒介しているリスクがあることから、徹底除去する必要があり、日常管理作業の一環で行われていて理にかなっています。


3番目に多い鶏舎床面で、1823検体のうち184検体陽性(発生率10%)と、ネズミに関連している可能性が高いことをうかがわせています。


その他、死亡鶏で発生率9.9%、鶏卵搬送バーコンベアで3.3%、鶏糞1.9%、鶏舎壁5.1%、鶏舎ホコリ2.4%、卵選別機械2.5%と養鶏場での基本的箇所はこのように示しています。


それ以外に注目したいのは、管理器材が6.4%と高いことが気になります。


製品である鶏卵からは検出がなかったことにも注目したいところです。

 

さて、データから見ますと鶏卵(卵殻からも検出なし)から陽性がないこと、ねずみに高い陽性があったこと、ねずみに関する場所(床面やバーコンベア、それを触る機会が多い管理器材等)が高い傾向があること。後に結論を示しますがサルモネラの対策はどこに力を置くのでしょうか。


もう少し、データを見てみます。
S.Eの食中毒は少なくなっています。しかし疫学的に、分離される原因は鶏卵と考えられており養鶏場が調査の対象になる傾向が非常に高いのです。


食品媒介有害微生物リスク管理セミナー平成19年の講演では、全国の約1/10の養鶏場での調査で、1995年当時は8.5%のS.E汚染率で、
2001年は3.5%の汚染率となり、平成19年ではわずかな低下程度と言われていると紹介されています。


鶏卵の流通経路を先ほどのセミナー資料から見ますと、

問題としない経路として
1、農場からGPセンターを通り量販店へ行く場合は、量販店の規格書等があれば順守されるため問題なしといわれます。
2、農場からGPセンターを通りパック工場を経て量販店も同じ。
心配な問題と考えられる経路なのは、
3、農場からGPセンターを通りパック卵・箱卵が卵問屋に行く場合は心配です。

卵問屋での詰め替えが行われ、保存期間の一定がなく、飲食店等業務用となり、詰め替えのため自社農場の卵かわからないことから調査が難しく、事故発生時の追跡は困難であるといわれます。


鶏卵の殻に付着したサルモネラ菌は殻の小さい穴から内部に侵入し増殖を開始します。しかし、すぐには増殖せず冷蔵であれば40日は増殖を抑えるため、冷蔵庫保管を基本とします。常温であっても例えば28℃であっても6日程度は増殖しないとされます。

ですので、鶏卵が汚染し増殖するまでは常温だからすぐになり事故に至るというわけではないのでしょう。

しかし、詰め替え卵の保管はまちまちで9日は安心かもしれないがうちの卵は2日程度、でも他所はすでに7日は経過しているということもあり得ます。

 

ではデータから見た鶏卵の置かれた立場を考えて見ますと、鶏卵から算出されるS.Eはほとんどなく、逆にねずみによる汚染により結果、製品に付着し事故に発展するという考えが出来ます。


たしかに鶏卵の殻に、もし付着しているとすれば集卵ベルトをねずみが通行し汚染するという考えも可能でしょう。
床面の汚染も、ねずみの通行による汚染で人が通行した際に交差汚染するという考えも成り立ちます。
鶏卵搬送バーコンベアもねずみが通行することがあり汚染も成立します。

ですから、鶏に対してワクチンを接種した場合、
鶏から産出される製品に汚染がなくとも、その後の保管状況等で汚染する可能性があるという考えは頷けます。


しかし、養鶏場で発生したという報道をされた場合、その発生源は鶏卵と言われるため、細部を検討すると実は鶏卵でしょうが、その根本は別なのですという論理もあるはずです。しかしそのような報道はされません。


ですから、サルモネラワクチン接種したから安全ですとは言い切れないのです。それ以外にも殺鼠対策をする。そして定期的に検査し、どの採材で異常を検知したのか確認し消毒し、ねずみの生息等確認する必要があります。

鶏舎を綺麗に管理することは衛生管理対策上有用ですし、それだけ害虫や衛生動物に対する意識も高いので、安全性が高いと言えるのです。ワクチンだけがS.Eに対し絶対的に有効ではないことを再確認したいと思います。

 

最後に最近のサルモネラ中毒の報道についてまとめてみます。
2017年11月2日山形県鶴岡市の養鶏場で産直販売した鶏卵からサルモネラ属菌が検出され、自主回収したと発表しています。


2017年9月21日山形県鶴岡市の病院からサルモネラ検出患者の増加があり1名が死亡したと通報があります。検体からサルモネラ属菌09群が検出されたと発表。
原因は鶏卵か、食肉か、外食か、はっきりと特定できず庄内地域での鶏卵流通状況を調査。
鶏卵の流通は、G.Pセンターより自社養鶏場の鶏卵のみ選別・包装している場合の他、他社養鶏場から仕入れた鶏卵も選別・包装していることが分かった。
結果養鶏場までさかのぼることが出来ない場合があった。


家畜衛生所による庄内地域18養鶏場のサルモネラ汚染状況調査を平成29年10月実施したものによると、2か所の養鶏場の環境検体等からS.Eを検出。

当該鶏舎の鶏群を廃用処分し清浄化対策を実施。

 

今回報道のあった該当養鶏場の付設G.Pセンターからは検出はなかった。
鶏卵も検出はなかった。
今回の検体解析の結果2農場から検出したS.Eは患者の菌株と遺伝的に同一と考えられた。
しかし、患者1名はその養鶏場の鶏卵と鶏卵加工品を喫食していない事実が判明している。

 

9月の報道から想像できるのは、前述の心配な問題と考えられる経路3に該当しています。
ですので、検出した養鶏場の鶏卵を食していないのに感染したという難しい理由が発生しているのでしょう。

 

鶏卵=サルモネラという考えはある意味正解でしょう。
しかし、鶏卵に直接原因があるわけでなく鶏卵が汚染されることによる被害がある可能性を示しています。


先ほど述べましたが、事故が発生し食品や鶏卵を調べても特定できないという構図があり患者の検体と養鶏場での菌株が同じであり、結果養鶏場の鶏卵となるのでしょう。


鶏からの産出でない鶏卵でのサルモネラ汚染でも、ワクチンしていますから安心ですということを宣言できるか。神話にとらわれると危険がある事例なのかもしれません。

鶏卵相場低迷はいつまで続くのか 5月以降の相場と夏季相場

鶏卵相場の低迷が続いております。相場高であった平成26年から見てみますと、右肩下がりであることがわかります。

 

今年1月の全農東京Mサイズ平均は121円でした。昨年12月の相場下落もあり1月の初値が注目されていました中、100円で年が明け本日(4月12日現在)170円に至ります。1~3月のM卵相場平均は平成26年は231円、平成29年は200円、本年は147円と相場上昇期と言われるこの時期も不調が続きます。

 

理由はいろいろあると思います。
1つに、増羽(供給量)が進んでいることです。特に関東、中部地域が多かったようです。関東の大産地(茨城・千葉)は共に前年より多く茨城は109.3%増、千葉は99.8%でしたが、群馬106.7%、栃木120.1%と全体では多く餌付けました。
全国2位の鹿児島も多く111.2%で推移しました。

全国で見た平成30年の餌付けは前年29年に比べ97%後半ですが、相場を見る通り昨年は西高東低相場(関東は東で低く、西日本地域は高い)であるのも一理あります。

 

本年2月までの餌付け発表によれば関東は前年比106%と多く餌付けていることが分かります。また中部地域も少しづつ増えています。

関東では茨城121.5%増、千葉99.1%、群馬117.3%、埼玉104%と関東産地は堅調に推移している状況です。


今年も全国で見る場合は前年比同じまたは減少と見られるかもしれませんが、三大産地は堅調で特に関東は多く推移する可能性が高いことから、供給が多く続くと思われます。

 

2つ目は、需要が頭打ちであることがあげられます。年間一人当たりの消費量はほぼ横ばいといわれます。

平成2年の家計消費量は1日29.7gですが、その後平成22年に27.5gに低下し平成29年は29.0g(概算)とわずかに過去消費量に戻りつつありますが、過去消費量を更新するほどの量になっていないことが分かります。

 但し、加工・業務用は増加が進んでおり、平成2年22.2gで平成22年25.8g、平成29年は26.7g(概算)と右肩上がりです。

 

このデータから読み取れるのは、家庭消費がほぼ頭打ちで、加工や業務用用途に需要が拡大しているということです。


上記データから簡易分析すれば、餌付けが多く家庭向けより加工・外食等向けが堅調である。よって鶏卵は家庭向けも生産するが、加工向けにターゲットを絞りたい。
となるかもしれません。

 

しかし、気になるニュースもあります。
日本農業新聞が4月10日サイト版で「鶏卵 価格低迷が長期化 生産潤沢で荷余り感」と報じていますが、生産量が潤沢で荷余り感が強いと紹介しています。
記事の通り、中食向けに荷動きがありますが、小売や外食は伸び悩みがあると言います。

 

中食は、総菜や弁当向けが主流でしょうが、供給元は固定されています。つまり○○弁当店にわが社の鶏卵を納めようといっても「先客がいます」と言われるわけでしょう。
では、液卵として販売しようと考えてもすでに専門商社がいます。供給先は既に決まっています。ですので養鶏家の販路戦略によりましょうが新規に開拓していくことは大変な努力が必要でしょう。

 

ですから、加工会社に納める養鶏家が多いと思います。代表的であるキューピーたまごは、加工向け・中食向けに必要な細工をして販売しています。

 

先ほどのように中食向けは現在好調です。外食向けもゴールデンウィーク対応で需要があると見込まれますから今後強く引き合いがあるでしょう。(そうなってほしいところです)

 

しかし、経済情勢によって外食産業は影響を受けやすいとされます。日本フードサービス協会が発表している「外食産業動向調査 平成29年」では売上げが好調である分析を示しています。ファーストフード店は洋食・麺類を扱う店舗が好調を持続しており、どちらも鶏卵を扱うことから朗報です。

 

しかし、ファミリーレストランは客数の低下が見られ、居酒屋も低下気味です。客単価は増加しておりますが消費動向から見ますと、低価格で早くお客様に提供できるサービスを好む傾向が見られ、直近の経済情勢次第でどう動くか心配されます。

 

加工向け以外に付加価値商品に取り組みしているキューピーですが、サラダ総菜とドレッシングは売上げが弱く年間計画を下回るという株式投資家の分析もあり、サラダのトッピングにもなる鶏卵等課題も残ります。

 

直近の状況をまとめました。それでは5月以降の相場はどのように展開されるのでしょうか。


まず、供給過剰であった昨年はどのように推移したのでしょうか。
東京の4月は20日まで「もちあいで」でした。ところが、4月23日に5円安となりゴールデンウィークに突入。
連休明けの5月7日に5円安となりました。その後は末日まで「もちあい」です。

 

さて、今年はどうでしょうか。4月は概ね「もちあい」となる予測ですが、連休明けは季節要因や相場休暇中の滞留で一時的に鶏卵過剰となり相場安になる可能性があります。

 

今年度の成鶏更新・空舎延長事業の基準価格は164円です。現在超過しており5月中は発動しないと考えていますが以降は分かりません。

 

昨年もありましたが、猛暑や自然災害がある夏でもあります。

 

長期予報の6月については、降水量は平年並みか少ない可能性が各40%とカラ梅雨の可能性があり、気温も平年並みか高い可能性が各40%と気温が高い可能性があります。

湿度が高く温度が高い場合は鶏の生命に危険が迫りますので注意が必要でしょう。

 

夏季相場は、需要が低下するため価格が下がる傾向があります。昨年は供給過剰でしたが西日本地域の需要不足により東日本地域の潤沢な鶏卵が西に動くことで相場が維持できたと言えるため、同じような構図でない限りは潤沢鶏卵によりある程度の相場安になるでしょう。

 

昨年は、供給過剰が続くため相場安の展開が続きました。

 

さて四半期が終わり次のステージに入りました。今年は暗雲立ち込める中のスタートですが、良い上期となってほしいものです。

6次産業化 卵の付加価値を考える

平成27年10月家畜改良センター岡崎牧場の資料「卵直販店に関する現状、課題等について」から、これから6次産業化を目指す方又は検討したいと考える方向けに卵の付加価値をつける考え方を示してみます。


私自身も以前お話いたしました「ライブドアブログ「6次産業と付加価値ある鶏卵 たまご街道が紹介されました」3月2日発表」にも共通しますが、

今回は資料を基に分析した内容を中心にお話します。「~たまご街道が紹介されました」を見ながら一緒にお考え下さい。


今回の資料からは貴重となる直販店の店舗数や経営体に関する調査がなされていることがあります。先駆者の方々はどのような人なのでしょう。
数値から読み取れる私の分析を含めて考えます。


1、飼養規模と飼育方法
飼養規模は1~3万羽未満の養鶏家が39で多く、次いで1万羽未満の26%統計となり小規模養鶏が多いことが伺えます。
10万羽以上の養鶏家は16%でした。
3年前の資料ですが、現在と比較しても大きな変化はないのでしょう。
飼育方法は、ゲージ飼いが、70%と最も多く平飼い22%、放し飼い2%とスタンダードな飼育方法の養鶏家が多いと思われます。


2、販売形態

鶏卵の販売比率ですが、生産量の50~100%の販売が45%が多く、ついで20~50%の販売が29%、20%以下販売比率は26%でした。
生産量がデータから見て2万羽程度までがおおいことから、1日の生産量は最大18000個程度までといえますから、9000個以上の販売量と推定できます。

 

販売に従事される雇用者数は1~3名が47%と多く、ついで3人以上33%の販売担当の方がいると想定されます。
売店の稼働によりましょうが、店休日がなければ1名での販売は大変です。ですので最低2名以上となることから3名までの47%はシフト運用からみて最小限であろうと推察されます。

3名以上はどれ以上かわかりませんが、販売形態によって(加工販売や飲食店併設等はそれなりの人員が必要です)はそれなりに必要でしょう。

 

では、販売する際に何をアピールするのか尋ねますと
①特別な飼料を給与していること38%
②新鮮な卵32%
③通常とは異なる鶏種13%
④飼養管理方法の違い13%
上記から想定できるアピールポイントは「こだわりのえさを与えて、新鮮なたまごです」というところでしょうか。


消費者は、新鮮でこだわっている鶏卵を好む傾向があります。ライブドアブログでも書きましたが、消費者のインタビューでは、「黄身の色が違う」「新鮮で他の卵と違う」等、おいしさよりもこだわり感と新鮮さを求めていることがわかります。


こだわりの販売店で購入することで高い価格であっても付加価値あって満足していることがうかがえます。

 

これだけのデータからは生産量の50~100%の鶏卵が付加価値ある卵に変化し増収が見込める。販売雇用者数は3名又はそれ以上で運用が可能である。
といえますが、そんなに甘くはないと言えましょう。


課題を質問すると現状の問題が見えます。
3、課題及び今後の展開等
経営の課題として、「PR方法の充実38%」「販売物の売れ残り対応22%」「各種情報の入手21%」となりました。


売店を開いている養鶏家の皆さんは、「繁盛店の情報(人気メニューや繁盛理由)が欲しい」「多くの消費者へ情報発信できる仕組みが欲しい」といえるのでしょう。


今では知名度も上がりました「たまご街道」もここ数年前から多くテレビでも取り上げられました。メディアへの取り上げが必須とも言えますが、今の時代SNS等ネットからの情報発信から拡散されることを期待してアピールしていくのも一つの方法ではないでしょうか。


しかしすべてがうまくいくとは限りません。専門の広告代理店等の知恵も必要でしょう。


うまく軌道に乗せる大変さが伺われます。
今後の事業展開を伺うと「拡大が44%」「現状維持47%」「縮小9%」と拡大する方と、現状を維持したい(積極的でない)方に2極化しています。


拡大を選んだ方は、地域に根差した経営手法がある方か販売利益が大きく魅力的と判断されているのでしょう。一方現状維持が最も多いため大きく経営に貢献できていないことが主因でしょう。

実際に経営されている養鶏家のお話を聞きますと「実際、軌道に乗せることはとても大変。利益が出るのは先になり、今期からやっと収支が良くなった」と話されましたのが思い出深いです。


これは、販売店を開き周囲に周知してもそれだけでは収支は改善しない。ですのでもっとPRしたいと考えるのです。

 

6次産業化は成功すれば利益に大きく貢献できますが、そこにたどり着くまでは大変な努力と辛抱があるのです。


付加価値のある鶏卵は、「○○のたまご」等のネーム卵が乱立しており消費者からみて分かりずらい状況です。そんな中うちの卵は○○のお店から絶賛されていて
そんなことにはならないと考えている方もいましょう。しかし、そのような〇〇のお店が絶賛するというのは他の養鶏家でも良く聞きます。

つまりその方の専売ではなく、品質がとても高いわけでないということです。(どこも品質は向上しています)
いつまでもそのような言葉にしがみつくといつか足元さらわれることになりましょう。


大規模化した養鶏家は、小さい養鶏家と異なり、簡単に6次産業はできません。それは1日の生産量が多いのです。
それでも、賢い養鶏家は危険覚悟でも新しい販路を求め続けています。そうでないと生き残れなくなっているのです。ただのネーム入り鶏卵ではもはや付加価値ではなくなりました。


それ以外の販売とは・・輸出?(いえ販路が少ないでしょう1日30000個かそれ以上の生産があれば消化はできません。


国内消費が頭打ちで、営業の腕でオセロのように販路がひっくり返ることも珍しいことではありません。(低卵価の際にあった大手の投げ売りのようなことがありました)

 

また、普通の鶏卵は飽和状態に達している現実があり、シェアは大きいのですが競争も大きく営業の腕次第で勝ち負けになることも珍しい時代ではありません。


鶏インフルエンザ等で供給が停止した場合、販売店は高確率で供給再開は出来ても取扱い量を縮小することを望むのが現実です。(取り扱わないこともあります)


それは、販売店は売上げの基本である鶏卵の欠品を阻止するため違う会社の鶏卵を入れ消費者に提供します。
ですので明日から再開しますといわれても逆に困るのです。ですから温情とは言いませんが僅かなオーダーになり、結果販路を失うのです。ですので、消費者の鶏卵を食することの心配ではなく、欠品になることが心配であるのが現実なのです。

 

 現在の販売店は鶏卵の取り扱いは増えてます。恐らく3~5銘柄の鶏卵が取り扱いされています。私の販売調査でも3つより4つ以上で7つの銘柄を扱うところもあり個々の販売面積が小さくなっているのを感じています。1銘柄が停止しても、取り扱い残りは多く、パッキング先や生産農場が広域になっていること事からすべての銘柄が欠品することはまれでしょう。


足元の供給先に変化が出ている時代、卵があればよい時代は終わりました。 あることが当たり前で普通の卵は営業の腕と価格となりましょう。


では、どうするのか。そんな選択に6次産業化も考える時代に入ったかもしれません。
今は、小さい養鶏家に最適かもしれません6次産業化ですが、でも活路を求める時がきっと訪れるでしょう。