nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

6次産業化 卵の付加価値を考える

平成27年10月家畜改良センター岡崎牧場の資料「卵直販店に関する現状、課題等について」から、これから6次産業化を目指す方又は検討したいと考える方向けに卵の付加価値をつける考え方を示してみます。


私自身も以前お話いたしました「ライブドアブログ「6次産業と付加価値ある鶏卵 たまご街道が紹介されました」3月2日発表」にも共通しますが、

今回は資料を基に分析した内容を中心にお話します。「~たまご街道が紹介されました」を見ながら一緒にお考え下さい。


今回の資料からは貴重となる直販店の店舗数や経営体に関する調査がなされていることがあります。先駆者の方々はどのような人なのでしょう。
数値から読み取れる私の分析を含めて考えます。


1、飼養規模と飼育方法
飼養規模は1~3万羽未満の養鶏家が39で多く、次いで1万羽未満の26%統計となり小規模養鶏が多いことが伺えます。
10万羽以上の養鶏家は16%でした。
3年前の資料ですが、現在と比較しても大きな変化はないのでしょう。
飼育方法は、ゲージ飼いが、70%と最も多く平飼い22%、放し飼い2%とスタンダードな飼育方法の養鶏家が多いと思われます。


2、販売形態

鶏卵の販売比率ですが、生産量の50~100%の販売が45%が多く、ついで20~50%の販売が29%、20%以下販売比率は26%でした。
生産量がデータから見て2万羽程度までがおおいことから、1日の生産量は最大18000個程度までといえますから、9000個以上の販売量と推定できます。

 

販売に従事される雇用者数は1~3名が47%と多く、ついで3人以上33%の販売担当の方がいると想定されます。
売店の稼働によりましょうが、店休日がなければ1名での販売は大変です。ですので最低2名以上となることから3名までの47%はシフト運用からみて最小限であろうと推察されます。

3名以上はどれ以上かわかりませんが、販売形態によって(加工販売や飲食店併設等はそれなりの人員が必要です)はそれなりに必要でしょう。

 

では、販売する際に何をアピールするのか尋ねますと
①特別な飼料を給与していること38%
②新鮮な卵32%
③通常とは異なる鶏種13%
④飼養管理方法の違い13%
上記から想定できるアピールポイントは「こだわりのえさを与えて、新鮮なたまごです」というところでしょうか。


消費者は、新鮮でこだわっている鶏卵を好む傾向があります。ライブドアブログでも書きましたが、消費者のインタビューでは、「黄身の色が違う」「新鮮で他の卵と違う」等、おいしさよりもこだわり感と新鮮さを求めていることがわかります。


こだわりの販売店で購入することで高い価格であっても付加価値あって満足していることがうかがえます。

 

これだけのデータからは生産量の50~100%の鶏卵が付加価値ある卵に変化し増収が見込める。販売雇用者数は3名又はそれ以上で運用が可能である。
といえますが、そんなに甘くはないと言えましょう。


課題を質問すると現状の問題が見えます。
3、課題及び今後の展開等
経営の課題として、「PR方法の充実38%」「販売物の売れ残り対応22%」「各種情報の入手21%」となりました。


売店を開いている養鶏家の皆さんは、「繁盛店の情報(人気メニューや繁盛理由)が欲しい」「多くの消費者へ情報発信できる仕組みが欲しい」といえるのでしょう。


今では知名度も上がりました「たまご街道」もここ数年前から多くテレビでも取り上げられました。メディアへの取り上げが必須とも言えますが、今の時代SNS等ネットからの情報発信から拡散されることを期待してアピールしていくのも一つの方法ではないでしょうか。


しかしすべてがうまくいくとは限りません。専門の広告代理店等の知恵も必要でしょう。


うまく軌道に乗せる大変さが伺われます。
今後の事業展開を伺うと「拡大が44%」「現状維持47%」「縮小9%」と拡大する方と、現状を維持したい(積極的でない)方に2極化しています。


拡大を選んだ方は、地域に根差した経営手法がある方か販売利益が大きく魅力的と判断されているのでしょう。一方現状維持が最も多いため大きく経営に貢献できていないことが主因でしょう。

実際に経営されている養鶏家のお話を聞きますと「実際、軌道に乗せることはとても大変。利益が出るのは先になり、今期からやっと収支が良くなった」と話されましたのが思い出深いです。


これは、販売店を開き周囲に周知してもそれだけでは収支は改善しない。ですのでもっとPRしたいと考えるのです。

 

6次産業化は成功すれば利益に大きく貢献できますが、そこにたどり着くまでは大変な努力と辛抱があるのです。


付加価値のある鶏卵は、「○○のたまご」等のネーム卵が乱立しており消費者からみて分かりずらい状況です。そんな中うちの卵は○○のお店から絶賛されていて
そんなことにはならないと考えている方もいましょう。しかし、そのような〇〇のお店が絶賛するというのは他の養鶏家でも良く聞きます。

つまりその方の専売ではなく、品質がとても高いわけでないということです。(どこも品質は向上しています)
いつまでもそのような言葉にしがみつくといつか足元さらわれることになりましょう。


大規模化した養鶏家は、小さい養鶏家と異なり、簡単に6次産業はできません。それは1日の生産量が多いのです。
それでも、賢い養鶏家は危険覚悟でも新しい販路を求め続けています。そうでないと生き残れなくなっているのです。ただのネーム入り鶏卵ではもはや付加価値ではなくなりました。


それ以外の販売とは・・輸出?(いえ販路が少ないでしょう1日30000個かそれ以上の生産があれば消化はできません。


国内消費が頭打ちで、営業の腕でオセロのように販路がひっくり返ることも珍しいことではありません。(低卵価の際にあった大手の投げ売りのようなことがありました)

 

また、普通の鶏卵は飽和状態に達している現実があり、シェアは大きいのですが競争も大きく営業の腕次第で勝ち負けになることも珍しい時代ではありません。


鶏インフルエンザ等で供給が停止した場合、販売店は高確率で供給再開は出来ても取扱い量を縮小することを望むのが現実です。(取り扱わないこともあります)


それは、販売店は売上げの基本である鶏卵の欠品を阻止するため違う会社の鶏卵を入れ消費者に提供します。
ですので明日から再開しますといわれても逆に困るのです。ですから温情とは言いませんが僅かなオーダーになり、結果販路を失うのです。ですので、消費者の鶏卵を食することの心配ではなく、欠品になることが心配であるのが現実なのです。

 

 現在の販売店は鶏卵の取り扱いは増えてます。恐らく3~5銘柄の鶏卵が取り扱いされています。私の販売調査でも3つより4つ以上で7つの銘柄を扱うところもあり個々の販売面積が小さくなっているのを感じています。1銘柄が停止しても、取り扱い残りは多く、パッキング先や生産農場が広域になっていること事からすべての銘柄が欠品することはまれでしょう。


足元の供給先に変化が出ている時代、卵があればよい時代は終わりました。 あることが当たり前で普通の卵は営業の腕と価格となりましょう。


では、どうするのか。そんな選択に6次産業化も考える時代に入ったかもしれません。
今は、小さい養鶏家に最適かもしれません6次産業化ですが、でも活路を求める時がきっと訪れるでしょう。