nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

2023年を振り返る 次期配合飼料価格は上昇となります

皆さんの町はクリスマスを迎え年末を感じさせるような街並みではないでしょう。私の地域の商店街では数年ぶりの歳末恒例現金つかみ取り抽選会を開き賑わいを見せており、今年も終わりなのだと感じます。 その令和5年の鶏卵相場は高騰と呼ぶにふさわしいほどの高水準で推移しました。 鳥インフルエンザが大流行している1月は前年止め市からいくらでもない値段低下で新年を迎え、深刻な供給不足で始まります。 1月の平均鶏卵価格は280円(東京M規準値)となり、上昇はどこまで続いていくのか、防疫措置に重点を置きつつ関心もあるそんな新年を迎えたことでしょう。 その後相場は最高値350円(4月)まで上昇し、飼料価格もわずかとはいえ下げが続き、燃料代の補助事業もあり幾分生産活動に余力が生じたという話も聞きます。 振り返りますとこの春先が最も収益的に良かったと答える農場も多かったような記憶があります。 夏以降、鳥インフルエンザ被害を受けた農場が順次回復を図り、鶏卵需要にこたえる準備が整います。 しかしながら、加工向け需要には殻付き輸入卵の増加という話もあり、まあ消費全体3割のうちの数パーセントの話でしょ。とあまり関心がない農場も多く見られましたが、 年末は加工向け需要は不発に終わるような相場に至ります。12月平均相場値は248円です。相場を見ますと5月頃までが最高値となり以降は下落が続いていくという構図になり、少し前ブログにてお話ししましたが秋以降の相場値について例年とは異なる傾向になるのではないかというお話をしたような展開に至ります。 12月は反転があるのではないかと想定していましたが、下落がやや続いている状況で加工向けは既に需要が一段落しているような状況となりました。 本年の止め市は27日(水)となり、持ち合いが続くとなれば月平均価格は248円、年平均額は307円となります。 これも過去にない高水準の平均価格になり、昨年冬から続いた鳥インフルエンザの被害がいかに大きかったことを改めて感じさせます。 2024年の初市は5日(金)です。8日間の滞貨玉となり供給が十分であれば例年100円、150円と大きく下がることが一般的です。1月は我慢の月とも言います通り、相場と採算ラインの乖離が大きいことから我慢して耐えるような1月と言われるのでしょう。現在245円ですから、145円かそれを少し下回る程度と予測できます。通常のスタート相場から見ればまあそんなものでしょうと感じるかもしれませんが、次期1月からの配合飼料価格は上昇となり2800円の値上げになることを発表しています。 燃料価格の補助、電気代の補助といった生産活動に必要なエネルギー費用はまだ抑えていますので、まだ良い年始になるのかもしれませんが、原油相場は上下を大きく動きながらの緩やかな上昇を見せています。補助がありドル安に進んでいる中でもガソリン価格が右肩下がりになっていないという現状は、中東情勢と輸送船の迂回運行によるコスト増が見込まれ、石油関連株はこれを見越して上昇しているぐらい、値が上がることを投資家は見ているようで、その通りであれば消費する私たちは応分の値上げに対応しなければならないという不透明な状況です。 鶏卵の生産も順調に回復しています。恐らく昨年被害あった農場のほとんどはこの時期までには回復して生産をしているはずです。一部はまだ模索中で来年以降に再開を目指すという農場もあるようですが、全体から見れば小規模ですので、回復しているとみています。 では、来年の生産はどのように戻るのでしょうか。 皆さんもご存じの通り、本年夏以降順調に続いており、来年は昨シーズンの被害から回復が春先には完了し通常生産量に戻ると見ます。 つまり鶏卵相場の上昇はまもなく終えるということになります。夏以降は今年度の被害状況により変わるでしょうが、2018年か19年ごろの相場展開になるのではと想像しています。 年平均は180円、190円程度となり、例年相場になる可能性もあり、その中の飼料価格の上昇は、少しコストが高くなり経営に不安もあるかもしれません。 では、仕方ないと考えるだけで何も考えず経営に邁進することも良いでしょうが、この先を見据えて農場生産の在り方やそのための勉強、幹部職員の育成等必要な準備をこの時期から始めることも大事になるのではないでしょうか。 鶏の生産能力を引き上げるのは鶏自身だけではなく、環境を作る人が重要です。 環境が良ければ、生産量も上がるというのは皆さん知っているはずです。 昔「鶏舎がきれいな農場は生産量も高い」という言葉も聞いたことがあると思います。これは古い高床式鶏舎であっても、手が行き届いているところは生産量を高く維持した高生産を続けている農場も多いと言うものです。 養鶏は、鶏卵の値段は餌代より高いので生産量があることは経営の基礎部分を守る役割を持ちます。だからこそ高生産を目指し種鶏メーカーや生産農場は目指しているのです。 餌を削減するだけではどうにかなるというわけではありません。両輪の姿勢が重要です。 そのためには、その管理をするための知識を得る、そのための管理を行うという人側の意識がとても重要です。 多くは、人にお金をかけるほど無駄であるという方もいますが、収入を失い出す農場ほど、コスト削減のため、目に見えない成果となる人への投資を疎かにしてしまい、見やすい餌代、箱代、燃料代といったものに全集中して、生産低下に気づけない・他も下がっている・鶏が悪いので仕方ない等他に責任があると解釈し、大事な点をいつまでも見失ったまま年月が進み、気づけばほか農場より劣化していることに気づけず、鶏が悪い・仕方ないという風土になり改善するという意識すら無くしてしまう農場になります。 お金がある今であれば、もったいないという基準は高いはずです。改善は今しかありません。でもこれをしない、人はいくらでもいるから入れ替えれば何とかなるという考えもあるでしょうが、入れ替えが激しいところほど、人は派遣で良い、実習生で良いとなると、技術伝承することもなくなり、何もとりえのない農場に転落する農場もこの先数年後から散見されると予測しています。他人の話でしょうというでしょうが、その状態がわかるのは自身ではなく他人が見てわかるものです。では皆さんの農場はどのような状態でしょうか。 点検して振り返ることも良いのではないでしょうか。 2023年ももうすぐ終わり、クリスマスが終われば謹賀新年ののぼりがあちらこちらで見られるようになり、もう正月だなと肌で感じるところまで来ています。 何も考えずに暮れだなと感じるのか、来年は今年とは違う年になると予測して動くのか。 ハッキリ言えることは、この年末相場は通常のことなのか、来年はどう予想されるのか。 年末を考え、人に時間や知識等充てるのも良いかもしれません。 本年は養鶏研修も多く開かれ招かれました。どの研修会も鶏の飼養管理より、更なる経営改善の考え方、人の意識、教育の必要性を大事にされたものが多かったと思います。 来年3月下旬以降は、新規採用者の新任研修も通常通り開くという養鶏場もあり、人を大事に育て農場を発展させるという取り組みが多くなったと感じます。 沢山の出会いが今年もあり、私にとっても勉強になり、参考になりとお互いウインウインの研修会でした。本当にありがとうございます。 来年も更なる発展に寄与できるよう努力をしてまいります。まだ鳥インフルエンザの不安が消えない時期ではありますが、皆さんの管理は昨年以上の気づきがあり応用が備わっているはずです。 皆様のご発展をお祈り申し上げ、本年最後のブログとさせていただきます。

鶏舎の空気環境改善実験が大分県の養鶏場で行われています 空間除菌という意識

富士通ゼネラルの子会社と日田市の養鶏場が12月から1年程度の実証実験を行っています。 この実験は、子会社エアロシールド(富士通ゼネラルの子会社)が、n-UV技術と呼ばれる波長254ナノメートルの紫外線を照射してウイルスや細菌の拡散にダメージを与え浮遊ウイルスや細菌を不活化させるという特徴があります。 この技術を搭載した機械本体は空間上部に設置することで、水平照射をするので人に誤射する等の影響を与えないという特徴を持ち、今回畜産動物にも空間環境改善ビジネスを展開する予定です。 実証実験の背景には鶏舎環境の特に冬場の換気は室温を保つために換気を十分に行うことができず、食鳥では育成率低下、食鳥処理場での廃棄率浄化を引き起こし、経営に悪影響を及ぼすことから、ワンヘルス(人獣共通感染症の課題)の実現を目指す実証実験を実施することとしたと言います。 報道写真では、天井近い上部空間に一定間隔に照射機械を設置し水平方向に紫外線を照射し浮遊ウイルス、最近の不活化をするという新しい取り組みです。 鶏舎の換気は、入気をして排出をし空気を入れ替えますが、外気温が低い冬は、少しの時間でも鶏舎温度が下がります。皆さんが湯船につかり暖かいお湯に冷えた水を入れると、入れた付近からお湯が冷えるというイメージをするとわかりやすいかもしれません。 ですから、最低換気をする農場が一般的で、農場によってはアンモニアガス臭が強いとしても害はないと説明する人もいますが、本音はガスによる被害発生する確率と保温する餌代等のコストの大きさを天秤にかけて、ガスの被害が低く、コスト低下によるメリットが大きいという判断でガス臭による影響はないと説明しているように見えます。 鳥インフルエンザを想定した空間除菌を意識する農場もありますが、多くは安定化二酸化塩素を使用した除菌をするという農場もあります。 これは細菌やウイルスの細胞膜を酸化させるという手法です。 この手の除菌は試験室レベルでは有効ではないかとされますが、空気が流れ隙間があり空間が多い鶏舎では十分に効果を得られているのかわかりにくいとされます。 このため、入気口に安定化二酸化塩素を塗布し入気時に鶏舎空間の除菌を試みるという農場もありますが、広さとその投入量から効果については十分議論されていないという場合もあるようで、効果については十分わかりにくいという事例もあります。 また飲水投与用二酸化塩素もあるようで、給水のピックラインに計算上必要な濃度を溶解させて不断給水するというものです。効果があるとされるようですが残念ながら効果があるのかわかりません。 実際この空間除菌をしていた農場でも鳥インフルエンザが発生したという事例があるようですので、空間除菌の効能以外にも違う懸念があるという視点が必要です。 ただ、今回の空間改善実験は、鳥インフルエンザ以外にも、空間に浮遊する鶏病にも有効であると思われます。空間除菌に疑問を持つ方も多いと思います。 大事な視点は、例えば鳥インフルエンザは鶏舎の空間に浮遊しているので感染するのかという疑問を持つということです。 鳥インフルエンザは何らかの経路を経て鶏に感染し被害を発生させます。では被害農場の数メートル離れた異なる会社の養鶏場ではなぜ空気感染していないのだろうか。 でも発生した農場もあります。 その差は何でしょうか。多くは堆肥舎の共用、死亡鶏処理機の共用という農場もあります。 これは空気感染で広がったのでしょうか。 つまり、鳥インフルエンザといった経営に大きく左右される場合空間除菌だけで防ぐという視野ではあまり意味がないということです。 空間除菌で期待できるとすれば、換気不良による細菌の不活化させることで、鶏が受けている免疫低下から要らぬ感染や疾病を防ぐという視点です。 繰り返しになりますが、換気が悪くなる冬は換気による弊害を心配するために換気がおろそかになり、それにより浮遊する細菌類や埃が多くなりそれが、鶏へのストレスになり鶏病誘発したり、生産性の弊害になることがあります。 これを改善する期待があるのが今回の照射機械になるのです。 換気を意識するという考え方はとても大切なことです。先ほどお話ししましたがガス臭あっても問題ないという意識でリスクをとって生産を維持したり期待するという行動は万一の時大きな影響を与えます。 換気と保温は反する関係であることは皆さん知っていることです。 であれば、リスクが小さいこのような環境改善方法もあるでしょうし、二酸化塩素も期待できるのではないでしょうか。 鳥インフルエンザは、感染すれば高病原性であればこのような方法があってもなくても残念な結果に至ると感じます。ですからこの改善は鳥インフルエンザ対策ではなく、冬等換気が十分ではない時期や高温管理等換気を極力なくす飼養管理には一考できるものと言えます。 鶏を飼養する多くの農場は、ただ鶏を飼養しているわけではありません。コストを意識しその結晶が高温管理、換気抑制による保温という方法になります。鶏舎は換気して飼養する前提で作られているため、その逆に取り組むということです。 それは正しいことなのかという話題もありますが、今の価格で供給するためにはコストを意識して対策を講じるしかありません。肯定するわけではありませんがこれが現実という姿なのでしょう。 であれば、呼吸器病を防ぐために何ができるのかという視点で見れば、今の作業を変えず病原菌を少なくするという視点からこのような考えもありでしょう。 皆さんの農場も、換気と保温の考え方に矛盾と難しさを感じると思います。仕方ないことと片付ける農場もありますが、また違う方法もあります。 では、その方法は換気を勧めることなのでしょうか。これが一番安上がりではあります。でも保温という矛盾が生まれます。 このような機械を使用することに疑問があるという方もいるでしょう。効果はどうなのか、信用できるものなのか。 だからこそ実証実験をしているわけです。この実験は24年11月まで続きます。 これにより、空気環境の浮遊菌数、アンモニア濃度のデータ収集と分析をし、外部機関と協力した有効性評価を実施するとしています。 この結果を待ち、冬のみならず今の高温管理へのリスク低減の選択肢の一つになればと思います。

卵アレルギーに対応した鶏卵が開発されつつあります 付加価値を知りただの鶏卵から脱する新しい取り組み

読売新聞が、国立病院機構広島大学が共同研究したゲノム編集した卵アレルギーをおきにくくする低減卵の臨床試験を行うと報じました。 国内初の商品となる見込みで、食品アレルギー第1位になる鶏卵に対していよいよ低減化した鶏卵が誕生する可能性があります。 報道によれば、来年卵アレルギーを持つ子供10名にアレルギー低減卵を加熱し乾燥させた粉末にして与えて症状が出るのか確認をしていくとされます。 安全性が確認できた後大手食品企業がこの卵を使用した加工品の製造と販売を行う予定です。 鶏卵アレルギーを持つ方は食品アレルギーがある方のうち最も多く、鶏卵、牛乳、小麦と上位3つのうち最も多いとされます。 アレルギーがある方は普段の食事や食品から原料に鶏卵が含有されているのか、鶏卵そのものの摂取に真剣に検討されていると思います。 今回の取り組みにより完全に除去される食品から、低減されている食品へと考え方が変わり、鶏卵が持つ美味しさや栄養価について改めて検討していただけるような時代になればと思います。 さて、鶏卵は付加価値がつきにくい食品とも言われます。 付加価値とは、一般的な鶏卵とは違い、餌にこだわり美味しさ、安全面へのこだわり、栄養強化、健康増進といった要素を含み通常の販売価格以上で市販できる価値を持つものです。 一般的なのは、ビタミン強化卵ですが、いまや珍しいものではありません。販路調査を見てもこの強化があるから選ぶという要素はほとんどみられず普及品と同様の位置にいると分析しています。 では、餌をこだわるはどうかと言えば、販路調査から見ても例えばポストハーベストフリー鶏卵は少し前の時代から選定対象になっていないことが既に調査により傾向がみられています。 これは、価格は高いがそれ以外は普及卵と遜色がないという理由もあり付加価値があると認識されにくくなっているというのが理由で、販売先もこれを理由に商品棚を提供する規模を縮小しているとも聞きます。 また鮮度、黄身が手で持つことができる等当たり前の物や、テレビ受けしやすいものも今の時代選定対象になっているとは言えません。 また昭和の時代と違い白玉より赤玉が価値があるという認識もほとんどありません。これは白玉の市場シェアが6割あり卵は白いが当たり前になり赤いから珍しいという考えを持つようにはならないのが理由です。 恐らく普及卵の付加価値を有する物はテレビ等で取り上げた直売所の新鮮鶏卵や○○の卵等知名度があり、リピーターになりやすい物に限られているというのが実情でしょう。その他では設備面の違いによるアニマルウェルフェア対応鶏卵も付加価値卵に位置付けることができます。 ですから近年はブランド卵に力を入れて「○○さん家の卵」「おいしい○○のたまご」といった生産者の顔写真を添えた鶏卵が乱立するようになり、結果付加価値向上から普及が進み、それが普及卵というクラスへ移行したとも言えます。 最近はブランド化に移行したが、その先の販路は大きく拡大できるのだろうかという不安の声も聞くようになったのは、これが主な要因になっていると推察されます。 鶏卵の選定基準は生産者にとっては厳しいのですが「価格」が主な選定理由であり、生産者の顔で決めているわけではありません。 特に本年初頭からの鶏卵販売価格はブランド卵と普及卵の価格差は数十円からせいぜい100円程度まで縮小したこともあり、一度ブランド卵に手を付けていただいたのに付加価値を見いだせず次は選ばれないということもあるように見えます。 つまり、付加価値は顔、餌、ビタミンといった昔からの手法の延長線上では認識されないということになります。 では、健康増進鶏卵はどうかというものですが、調査では珍しいから購入するという声を聞きますが、リピーターにはなりにくいという結果もあります。 これは、鶏卵が持つネガティブ要素と健康増進がミスマッチしているのが主たるものです。鶏卵と言えば高コレステロールと誤認され、普及活動あるものの改善は僅かという状況で高コレステロール食品を食べてEPA摂取をすると言われてもという具合です。 物珍しさから消費者は1回は手に取りますが、価値観を感じない場合2回目以降の購入確率は格段に下がります。 ある調査会社の方の話では、鶏卵分野で勝つには、鶏卵分野に知名度を上げていく、知名度を上げるための方策をとっている、商品を選ばれるような仕組みがあるといった要素が必須になると聞きます。 乱立状態の今の時代では工夫を必要とされるものです。皆さんはどのように取り組むのでしょうか。 今回の卵アレルギー対応鶏卵は、ただの付加価値ではありません。摂取していいただける機会が増えるかもしれないという販路が広がるという価値で、商品そのものに価値を有しています。 鶏卵消費は国民2個ぐらい食べてもらって生産活動が成り立つと聞きますが、人口減少が進んでいる時代10年後は4個、5個と増えていくことで成り立つというのは少し危険な話でもあります。外国人労働者を盛んに入れて人口維持をしない限り困難のようにも感じます。 加工向けも含めて消費しているという考え方もありますが、その分野には輸入という新しい阻害要因もあり得る時代になります。 鳥インフルエンザが発生し供給が不安になった令和4年の大流行はまさに消費活動に大きな変化がある時代でした。 生産者は減少は仕方ないと考えがちですが、鶏卵を消費するサイドは違う考え方で鶏卵を購入しているという認識を持っていただくと、鳥インフルエンザによる損失は農場単位どころではないということがわかるはずです。 今年は既に昨年発生した農場が今年度も発生したという話を聞くようになりました。 2年連続発生農場になるとはどういうことなのか、設備の欠落だけなのか、人的要素はどうなのか。 防げない、仕方ないでは見えないウイルスに立ち向かうことはできません。 できることを考えしっかり行う。人は善人でありウイルスを持ち込まないという意識は今年も安心材料なのか。それより入気口に消毒剤を注入して鶏舎に入れたほうが確実なのだろうか。 なぜウインドレス鶏舎は発生する設備なのだろうか。 自問自答して見ると、新しい視野が開けると思います。 報道は農場の被害と生産者の悲痛を伝えます。その通りですが、その内容はすべて正しい認識で書かれているとは限りません。 ウイルスを真剣に考えることができるのは皆さん生産者という農場サイドだけであり、外野はわかるはずはありません。 では、あらゆる対策を考えるともう一度問うと何かが見えるかもしれません。 ブランドを確立することは今の時代そんな難しいものではありません。販路先や集荷先と相談すれば展開も可能でしょう。問題はその先長く展開できるのかという視点です。 入り口は敷居は低くなりましたが、大事なのはブランド力を維持する方策とそのための戦略です。それは鶏卵そのものが本当にブランド力を持つことができているのかという点も考えてみてください。 そのためには鶏卵を選んでもらえる基準をどこに置くのかという視点はありますか。農場そのものは無価値でしょうか。アンテナショップ乱立だけでは価値向上にはなりませんが、そのショップに何かひと手間を加えるとどうでしょうか。 違う視点もありませんか。 ブランドが乱立している時代、多くのブランド卵は価格差があるだけの普及卵と揶揄されないように、何かひと手間を加えた価値を加えるという視点で自農場を見てください。 きっと何か変われるような要素が見えるはずです。

熊本県は県内養鶏場に対し消毒命令を発令しました 季節の到来になり一層の警戒をお願いします

熊本県は、佐賀県茨城県で発生した鳥インフルエンザ発生により、本日28日県内養鶏場に対し消毒を徹底するよう命じました。 期間は12月1日より来年2月29日までとなります。 これにより県内198養鶏場に対し消石灰を合計200トンを配布し、養鶏場に対し消石灰の散布と消毒の徹底が義務付けられます。 消石灰散布については、家畜保健衛生所の指導に従い散布することになります。例年養鶏場の外周に幅2メートルの消石灰帯を作ることになると思います。 作業性を考え、確実な実行をお願いします。 これまでのところ全国では24日に佐賀県で、27日は茨城県で高病原性鳥インフルエンザ(どちらもH5N1)が発生しており、合計約12万羽が殺処分されています。 鳥インフルエンザが発生し、多くの県は一層の警戒感が高まります。皆様の農場も警戒度を上げてご対応ください。 野鳥の感染事例は28日時点23事例発生しており、北海道道東地域から九州鹿児島県まで広い範囲で検出されています。 いずれもH5亜型又はH5N1まで判明しているものもあり、養鶏場での発生と同様の型になっています。経路はわかりませんが農場までに遮断できるような作業であるのか、もう一度再確認をお願いします。 多くの農場では、消毒の徹底や遮断するための方策、交差汚染による危害の抽出等見えないものから鶏を守る取り組みをしていると思います。 忘れがちなのは、危害がわかったとしてもそれを行うのは人であるということです。 人の作業に無駄な手間を混ぜてはいけません。効率よく無駄なく、簡便にを意識した遮断方法を構築してください。 なんでも履き替える、とりあえず要所要所で消毒しているだけという農場も散見されます。本当に大事なのは遮断です。 鶏舎に入れないためにどう遮断するのか。この1点を考え想像してみてください。 恐らく、何となく思いついた方法より、簡便でかつ簡単な方法で遮断できる方法が見つかるはずです。 農場を見ていない人が想像する遮断はとかく、無駄が多く無意味な履き替えや遮断方法を思いつくようです。現場の意見も聞いて修正することをお勧めします。 12月になります。皆さんの農場では警戒度を上げて対策を講じていることと思います。 年の瀬に向けて、皆さんの農場、鶏、それに携わる方々のためにも出来るだけのことを行ってください。

鳥インフルエンザの発生が確認されました 令和5年度最初の発生となります

佐賀県は25日、鹿島市重ノ木の採卵鶏農場から高病原性鳥インフルエンザが検出したと発表しました。 このため県は採卵鶏4万羽を殺処分とすることとし本日午前9時より開始しています。 県によれば、昨日24日午後3時45分同採卵鶏農場より通報を受け、簡易検査を行い陽性であることを確認しました。県は対策本部会議を開きこの先の予定を確認し、中部家畜保健衛生所において遺伝子検査を行い確定を待つ状況となります。 農場概要によれば、鶏舎10棟の農場のうち2棟で死亡羽数の増加があるという旨通報があります。 24日23時中央家畜保健衛生所での簡易検査2回目でも陽性が確定し、遺伝子検査を実施し、その結果を農林水産省へ報告します。 本日25日午前9時高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜(H5亜型)決定となります。 このため、殺処分を9時より開始、発生農場から半径3キロメートルの家きん・卵の移動禁止、10キロメートルまでについては搬出を制限することとなります。 4万羽規模ですと順調にいけば数日で殺処分は完了し、残置物の除去と消毒が進んでいくと思います。いずれにしても関係機関の方々のご尽力のおかけで進んでいきますので、私たち畜産農家は発生したから「大変だ」ではなく、野鳥感染の話題がおこれば高確率で農場感染の話題が出るということを改めて知っておく必要があるでしょう。 今回の事例では野鳥からの感染報告がない県での発生となり、皆さんご存じのことと思いますが、野鳥検出がないから感染リスクがないということはあり得ないという事実があります。全国的に渡り鳥は飛来して羽を休めています。恐らく国内の野鳥も静かに感染機会がおこっていると言われています。これは渡り鳥が飛来したからなのか、既に国内野鳥間で感染が続いているのかわかりませんが、問題はその感染が何を媒介して農場まで到達したのかという点です。 野鳥を鉄砲で追い払うことはできません。ですから農場敷地内にリスクが上空から落下しておりそれを踏みつける人なのか、捕食する動物なのか、小動物なのか、両方なのかと考えて遮断する方法を今一度確認してください。 九州地方の発生だから次の発生も九州とは限りません。多くの事例では次は西日本や東日本と遠い地域で発生することも珍しいことではありません。昨年同様全国各地で被害発生を聞くこともあり得ます。 鶏卵相場が安くなったから、上昇する機会になるという声も聞きますが、本当の被害は全国膨大な鶏達が処分され鶏卵が不足しその代用に代替卵や輸入卵の増加というシェアの変革を起こして販路が小さくなるという業界全体の損害があるということまで視野を持っているのか、農場や業界全体で考えると他人の農場だから無関心ではなく、明日はどこの県で報告が発生するのかという、結果消費者サイドの離れによる弊害を意識してください。そうすることでどのようにうちは対策を講じていくのか、もっと本腰を入れて考えるきっかけになるはずです。11月も下旬になりました。昨年、一昨年ともこの時期から来年初春まで話題が続く季節になっています。養鶏研修に参加いただいた皆様方におかれましては、その研修での想いを思い出していただき明日からの農場衛生管理にもう一工夫を考えていただき、繰り返しの衛生管理にはなるでしょうが、継続は力なりとも言います。できることを最大限毎日繰り返していただき被害ないようお過ごしください。また被害にあわれた農場の皆様には心よりお見舞い申し上げます。そして防疫措置に当たられている関係者の方々には大変ご苦労が続くことと思いますが、被害が広がらないよう迅速な措置にご尽力いただければと思います。季節は冬に向かいます。今週から真冬のような気温に低下していくという予報も聞きます。皆様も農場経営を心配する真冬に向かっていることを再確認いただきご努力をお続けください。

野鳥から鳥インフルエンザが検出されています 最大限の警戒をお願いします

11月も下旬になり、季節はクリスマスへと進んでいます。 街中の洋菓子店やテレビ広告ではクリスマスケーキの予約を勧めるのぼりやCMを見るようになりました。 鶏卵相場を見ますと、10月から生産量の回復からじりじりと下降しており、17日時点東京規準値は250円(2L、L、M、MS全て同一価格)となり生産回復から小玉の流通が増え、すでに回復している農場のMや2Lクラスも潤沢な供給になっていると推察され、昨年から今年まで被害にあった農場が順調に回復していることがわかります。 また加工向けの供給もわずかとはいえ輸入鶏卵に置き換わり国内の消費過程に変化が生じているようです。 昨年と違い、ケーキの予約が大変という話題もありませんので相応の受注に対応できると自信を持っている店舗が多いと感じ、購入する側にとっては12月に入っても商品選択に余裕ができ困らないという利点がありそうです。 そのような11月ですが、すでに野鳥の感染事例が報告されており、北海道から九州まで広い範囲で検出されており全国的な警戒が必要になっています。 本日時点農場への感染事例はありませんが、通例では野鳥感染が報じられると時間を置かず農場への感染事例が報告されます。積極的な防疫対策を進めてください。 さて、ブログでもお話ししていますが、鳥インフルエンザを意識する対策として消毒・交差汚染意識・人の意識維持が大事になっています。 昨年の大流行を経験した農場では今年は今までとは違う取り組みをしているところもあり、被害の甚大さ、被害を受けた後の再開へのご苦労もありただ消毒していれば良いというレベルではないという意識の高さがあります。 皆さんの農場も、昨年と同じ意識ではなく、昨年以上の意識を持って取り組みを続けてください。 今年度の養鶏勉強会では、交差汚染について議論する機会がとても多いと感じました。 消石灰の消毒と、踏み込み消毒の徹底程度の議論が多かった昨年とは違い、明らかに人への意識が高まった内容が多かったと思います。 人は意識が高いので感染させることはないという性善説に基づいていろいろな場所へ出入りできるのですが、自在に動き回れるということは「感染源を持った場合はまき散らす」という危険性があるということまで知る人は意外と少ないと感じます。 あるいは、そのようなことはしないから検討する必要がないという、従業員との関係性悪化を防ぐという忖度的な意識がある農場もあります。 どちらが良いのかはわかりませんが、大事な点は鶏舎にウイルスを入れないことにつきます。 野鳥が鶏舎に侵入して被害が発生するということは、通常管理をしている限りあり得ません。これは金網を設置しているし不用意に扉の開放をしていないということが一番の理由ですが、それ以外に人が外からの汚染物を持ち込まないという遮断するという行動があります。 長靴の履き替え、手指消毒、衣服を交換するといったものです。 それぞれとても重要な行動ですから、農場従事者の方々にご指導をしていただきたいと思います。 今年度分割管理を導入し再稼働をした農場もあります。被害を半分、それ以下に低減する効果が期待できます。そのために莫大な資金を投入し、動線を分割し集卵設備を新設したり、車両・人の分割した鶏舎での共用や入場を禁止して徹底した農場運営をすることで初めて効果が期待できるとされます。 100万羽規模の農場が分割管理を導入したとしても、コストを削減した費用をあっさりと吸収しコスト増に至るという話も聞きます。 採算面から見ても100万羽規模程度でも採算が合うというところまでには至りません。それだけのことをしても被害を最低限に抑えたいという経営者の思いに従業員皆さんが答えることができれば良いと思います。 そのためには、農場を分割しているのだから、鶏舎に闇雲に立ち入らないという意識、仲間だからこそ困ったときに分割している鶏舎に安易に侵入するという意識、車両や器具が故障したからという理由でその鶏舎で使用している重機や車両を安易に貸し出すという意識。 何のために分割し分けているのかという視点が現場にないと、大金かけて導入しても意味を持たないという残念な結果もありえます。 皆さんの農場はワクモの発生はありますか。最近は新薬の登場でだいぶ寄生虫被害が拡大するという話題は聞かなくなりましたが、ワクモが1号舎で発生したとき時間を置かずに隣の2号舎、3号舎へと伝播するという事例はありませんか。 この要因には、器具の共用や人の共通往来があって広げるという事例が多いと感じます。 長靴にワクモが登り、その履物が隣の鶏舎でまた歩き回る。手指の消毒はしていても作業着はワクモが付着しておりその状態のまま隣の鶏舎に入る。 ワクモが付着した軍手を使用して隣の鶏舎で修理作業を行う。 いかがでしょうか。人が遮断していない場合ワクモの事例で考えてもいくつも不備というか意識の低下による被害拡大が想定できます。決して大げさな話ではありません。 でも人は汚染を広げないという性善説に基づいて鶏舎に出入りをしている。 そう考えると、ねずみや猫や野鳥を鶏舎に入れないという取り組みだけでは解決できないということがわかります。 では皆さんの農場ではあと何をすべきなのでしょうか。 例年通りの消石灰の散布で十分でしょうか。たまに次亜塩素酸ナトリウムを敷地周辺に散布するだけで解決できるでしょうか。 人は性善説に基づいて、この先もこのままで安心でしょうか。 農場には当たり前のことを何も疑わずに、当たり前ではないという事例が多くあります。それに気づき対処するのが本当の農場運営ではないかと思います。 鳥インフルエンザによる被害は殺処分による無収入だけでは済まされず、再稼働によるコスト増という経営的負担、欠品を生じさせたことによる出荷先からの取引規模の低下や停止ということもあります。 相場が高いときは相場取引でも十分採算は合うと思います。今がその時期です。 でも相場が例年のような年平均190円や210円程度になった時、相場取引や加工取引だけで採算が合うのかどうか。 しばらくは金融機関からの借り入れで当座の資金に不安はないでしょうが、低相場時代が長くなる養鶏業では、それによる農場の体力低下が少しづつ進んでいき、最終的には廃業を決断するという事例もあります。 ご自身の農場では関係ないではなく、発生した農場も関係ないと感染するまで思っていなかったはずです。問題はどのように発生させないのかという点です。 低相場と飼料価格の高騰で負債が膨らみ経営破綻した養鶏場が多く発生したのは2021年から22年にかけてのことでした。その22年から23年初頭にかけて深刻な被害が発生した令和4年の大流行。 その大流行から回復した多くの農場は高相場のおかげで大変とは思いますが、何とか軌道に乗せることはできたと思います。 その軌道は慣性の法則のようになにもせずとも、その良い状態を続けていくことができると信じていると思うところもあるでしょう。 でも鶏卵相場は最高値350円を頂点に現在はいくらになっているでしょうか。 この先年末まで350円を超えるような相場になるのか。なったとしても翌1月の相場はどれくらいの低下になるのか。 出荷抑制が発生したことによる出荷先への信頼は、不可抗力とはいえある程度そこなっているという現実があります。 他農場の製品に置き換わり、規模が小さくなったとはいえ取引が継続できただけ安心と言っていられるのか。 相場値が下がった時、その損害の大きさに初めて気づくということもありでしょう。 大事な点は、そのようなことはないと思い平穏に暮らしていくのか、最初からウイルスが侵入させないようなシステムを作り活動していき万一の場合でも悔いが残らないような管理ができていると自信を持って言える運営ができるのか。その考えだと思います。 研修では真剣に聞き入ってくださった農場関係者の方や地域団体の方々。その皆さんの真剣さが農場を変えていく原動力になっていると感じます。 多くは今年も消石灰散布をボチボチやろう。うるさいから石灰撒いておこう。そんな意識の農場も残念ながらあると思います。 被害を出さない農場運営を考えた時、皆さんはどのような運営が必要になると感じるでしょうか。 今日のお話から、昔からの考えだけではなく今の時代に合う考えを見つけてみてはいかがでしょうか。

活気ある農場と閑散とした農場 その差は農場の能力差と関係があるのでしょうか

良く尋ねられるのですが、活気がある農場は本当に生産性や農場の雰囲気は明るいのかと言われます。 確かに様々な農場や研修会に参加しているので、多くの養鶏家さんとお話をしますし、そのうちのいくつかの農場は現地研修もする機会がありますので農場もお伺いしています。 農場内の組織員の方々と接しますので、確かに活気ある農場と、そうでない農場があるのも事実です。 自身の農場だけを見ているのであれば、明るい・暗い、活気ある・陰気感がある、生産量が高く優れる・まあそれなりの生産量等それぞれに違いがあることはわかりにくいと感じます。 何等かのグループに参加している農場であれば、そのグループ内で、明るい・暗い等比較できるかもしれませんが、その比較に意味はないと感じます。 逆になぜ気になるのですかと尋ねると、「挨拶できない従業員が多くてね」と言います。そして、その農場ほど生産量が過去数年間比較しても少なくなっていく傾向があるのですよ。と続けます。 その農場責任者いわく、いろいろなビジネス本を見ると、挨拶できない人は仕事が不得意の傾向があるらしい、挨拶・朝礼をしない会社は伸びない、トイレ清掃から気づけが生まれて生産性が上がる等、一見その通りと思わせるような見出しの内容です。 だから活気ある農場にさせたいのだと言います。そのためにも現状はどうなのかと尋ねてくるようでした。 活気があるから従事者の意識レベルが高く、生産量が高くなるのかと言われると懐疑的ではあります。 でも、活気がある農場ほど鶏、飼養管理、設備、堆肥、鶏病といった広い範囲の話題をしているのもまた肌で感じることでもあります。 逆に閑散とした農場では、今日の作業を終えることに趣をおいており、特に鶏や飼養管理といった改善のきっかけになるようなキーワードの話は出てきません。 だから活気がある農場にしたいと感じるのではないかと思います。 では活気があればすべて解決できるのか、農場を見ている状況から考えてみます。 そもそも活気があるとは何なのでしょうか。 魚河岸のように「いらっしゃい!旬のサンマ、イワシだよ~」のような、生き生きとした元気な感じを想定しているのでしょうか? 農場内を走り回り、せわしなく働く作業の方々なのでしょうか。 小売店のように従業員がお客様とすれ違うたびに「いらっしゃい」と、にぎやかな掛け声をかけることなのでしょうか。 多分それだけであれば、朝挨拶を大声ですればよいだけのことだと思います。 活気がある農場の多くは「組織内の風通りが良く、課題に対して解決させたい風土がある農場」だと感じます。 つまり、魚河岸がいれば解決できるわけではなく、挨拶できないから劣化すると言うことではないとみている者からの正直な感想です。 活気づけるには、活気を与えるのではなく、風土・組織から変えないと解決できません。 ある活気ある農場は、先代さんから息子さんに経営が代わります。 大学を出て獣医師免許を取得して会社に戻り右腕さんに師事し、農場内の仕事、鶏を見ることから学びます。 当然1年生ですから、社長の息子という目線で見られません。仕事ができる右腕は仕事を教えることを優先しており基本を教え込みます。 鶏の関わるミスは、他の従業員と同じように叱責します。仕事が円滑に進むよう、中堅と行動させてサポートも徹底しており、接し方は他の従業員と変わりません。 休憩時間も、缶コーヒーを互いに飲み世間話から先代の苦労話からここがダメななんだというグチまで聞かせます。 息子も苦笑いしているところも多いような感じでしたが、人による違う接し方をしない右腕の技量を吸収しているようでした。 そんな彼も6年程度右腕と行動して、一人前まで育ち先代が70歳になった節目で経営を引き継ぎして新社長となります。 農場従事者も叱責され育った新社長に異論を唱える者はいませんし、右腕も満足しています。 「あんな鼻たれ小僧が社長だとさ」相変わらず本音なのかわかりませんが、聞かせていますが満足しているようでした。 時代は高床式からウインドレス鶏舎へ時代が変わる平成のことでした。 ウインドレス鶏舎は自動環境維持システムで、高床式と違い技術はいらないとされました。 ですがこの農場は環境を作るには技術がないとただ機械が動くだけになる無用の長物になりかねないという考えがありました。 これは右腕の技術に触れた新社長のしっかりとした意識が感じられます。 設定を確認し、風の流れを見て、環境の出来不出来を見たうえで鶏を入れていきます。 当然微調整は必要になりましたが、食下量、動力費、不要な雇用を防ぐことができた稼働諸費それぞれ高床式鶏舎とは大きく異なる費用の削減ができました。 また、しっかりとした環境設定ができたことで生産量も向上していきます。 このような農場では、右腕が部下にしっかり教え込むことで、部下は右腕とは違う柔軟な発想力と想像力を発揮して、右腕に立案し右腕が経験から修正させて実行するという農場になります。 恐らくこれが、社内風土になり話して・考え・行動して・微調整して・農場の力量が向上したという、先ほどの「活気ある農場」となったのではないかと思います。 活気ある農場では、議論や考えを大事にしています。 これは発表することで上司へのアピールでしているわけではありません。 この点をこのように改善した方が絶対に良い、鶏を飼養する温度はこの程度まで上げても良い等さらにできることを疑問として感じ、聞いているという感じです。 ですから議論していると見られがちですが、本当は疑問を聞いているという感じのように見えます。 その疑問にしっかり答えられる右腕や中堅がいる農場なのだと思います。 活気ある農場にするには、魚河岸になるのではなく「考えられる中堅と右腕がいる」ということが必須です。 そして、経営者も考えることを率先していなければ風土も変えられません。 そのような風土もなく、活気ある農場をするといってもまず無理でしょう。 まず、風土、そして応えられる中堅と右腕が存在しているという順序がなければできません。 形から入るではなく、形がなければ展開できないのです。 形がないのであれば、作ってから入るのです。 ない状態で形から入ってもできません。その点に気づけないといつまでたっても何も変わらず時間と年月が過ぎるだけで成果もありません。 ここまで見ていただいて感じたと思います。 活気ある農場の能力差はあるのかという点ですが、答えは差はあるということになります。 それは魚河岸だからではありません。 そのような風土だからです。 考えて前に進んでいく姿勢が随所に見られ、それが活気あるように見えるのです。 良くしよう、生産を向上させようという前向きな姿勢が思考力を鍛え、粗削りした答えが見つかり、それを右腕が修正させて具体化させていきます。 これによりある程度の失敗が事前に回避でき成功への精度が高まります。 これが自信になり、さらなる改善を求めるのです。 人が育つには、考えるきっかけから始まりそれを修正できる人材が助言し、それが知識になります。そして実行して、成果を確認して、次の思考が発生していくのです。 これが人材サイクルなのですが、活気ある農場はこれができているのです。 そうなると活気を求めるのであれば何が必要なのかわかると思います。 形があるのか、なにのか。 風土はどうか、様々な視点で見てください。 ブログ「note」には農業景況調査から人材育成について調査した結果を掲載しました。 関連する内容になっていますのでご覧いただき、養鶏農場が感じている人材育成について、皆さんの農場と重ね合わせてください。 新しい視点がきっと生まれると思います。 鳥インフルエンザが心配する季節でもあります。でも大事なのは、どのように心配するのかということです。そのためには、農場の皆さんとどのような議論をしているのでしょうか。人の意識は何が要因で変わるのか・浸透できるのか。そんな視点で見ると活気ある農場という話題も、その風土の大切さがこのような対策にも有益になると思います。