nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

鶏卵の回収事案と問題点 鶏卵品質の向上を目指して

食品衛生法違反の事例がまた発生しました。
養鶏に携るものとして、このような報道が出ると悲しく思います。


今回もサルファ剤の残留品が市場に流通し、県の買い上げ検査で検出されるというものでこのような事例は数年前にも発生しています。

埼玉県の発表では、「2019年2月19日に南部保健所が実施した収去検査の結果、鶏卵から動物用医薬品スルファモノメトキシンが検出されました。これを受け、鶏卵の選別包装者を所管する狭山保健所は、当該品の流通状況を確認するとともに、2019年2月23日に当該事業者に対して回収命令を行いました。」

この会社は、何かの資料で拝見したことがありますが、販路がしっかりしていて、多様な企業に出荷し加工販売も手掛ける安定した経営をされているようでした。


多くの養鶏場は、市場価格に左右される販売が基本となり、加工販売を行い安定した収入を得る取り組みをする会社は多くないのが実情です。(実際加工販売が軌道に乗るまでにはリスクがあり取り入れない養鶏家が多い)

ましては、6次産業化が軌道に乗るには並大抵の努力では成功できないことでお手本ともなる経営体であったはずです。
従業員の週休2日制を取り入れるなどさきがけとなる存在でもあります。

(現実まだ養鶏では隔週2日が最も多いのです)
そのようなところが、今回の事故を起こすとは正直驚きがありました。

 

今回の回収事案から見える問題点は、サルファ剤(薬剤)の使用が徹底されていなかったのではないかということです。
そもそも、採卵鶏には使用できない薬剤です。使用した場合卵への移行があるため効果があっても安易に使用できないのです。

寄生虫(腸管に寄生しているのでしょうか)対策の投与と推察されますが、採卵鶏には使用できないと指示書にはあります。
使用した場合鶏卵を廃棄しなければなりません。恐らくしばらくの期間は廃棄となります。投薬を中止しても、卵胞(卵の黄身の部分)は相当数体内にあるため、1カ月若しく用途転用も含めて検討し基本廃鶏にするのが自然です。

抗生剤は使用しないのが基本です。しかし、衛生環境が良くない場合や鶏に危険が生じている(死亡している)場合はやむなく使用するのも現実です。
十分に期間を設けたので安心したのか、廃棄期間を守らず出荷をしたのか、そもそも抗菌剤の使用に抵抗がなかったのか。
再発防止を行い鶏舎環境の見直し、信頼回復を目指していただきたいものです。

 

最近の建物はウインドレス鶏舎と呼ばれ窓がなく、狭い建物に効率よく機材を配置したもので環境が人為的に操作でき管理しやすいよう設計されています。
しかし鶏舎内の環境が悪化した場合の被害は大きく、環境汚染が発生した場合は昔の設備の鶏舎より鶏のいる場所と鶏糞が近いことで汚染度が格段に上がります。


昭和の時代多く見られていた建物(地べたに鶏がいてそのわきに鶏糞を排出し、鶏が食べてしまう環境)が、少し昔の鶏舎では鶏糞が鶏から離れるのでついばむこともせずこの病気が少なくなっていましたが、近年の最新鶏舎(ウインドレス鶏舎)では、集糞ベルトのすぐ下に鶏が活動しベルトにこびりついた鶏糞をついばむことで運が悪い場合寄生虫を取り込むのです。そして、その鶏が排出する糞から・・と広がっていくのです。


また洗浄と消毒が十分でない場合再発しやすく結果常態化しやすい危険性が付きまといます。環境の悪化は鶏に対し病気として現れます。
近代建物は効率面も重視しているあまり、このような病気がまた増え始めているという話もよく聞くようになりました。

鶏卵を効率よく少ない人員で運用するには、このように最新鶏舎にしていかなければならない現実を踏まえると管理方法次第では、このような事故が今後もいろいろな企業から出てくる可能性があるのです。

千葉県でも買い上げ検査によって2017年7月に「スルファモノメトキシン(サルファ剤)」が検出し基準値(0・01ppm)を超す0・14ppmを検出し鶏卵回収命令が発せられています。


是非、衛生管理と鶏に対する危害を防ぐよう対応し、流通しないよう安心安全な鶏卵を出荷していきましょう。

鶏卵品質の向上を目指すためには、鶏舎環境と薬剤使用の適正化が重要なのです。