nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。

ワクモの被害について考える 養鶏の技術

残暑も少しづつ治まり秋が近づくころとなり、養鶏家の皆さんは秋に向けた対策を講じられていることでしょう。


摂取量増加による鶏体の増加や卵重の増加、生産量が増えるはずですが日齢や体調の不出来によっては生産個数より生体体重に変わり、脂肪肝による斃死もあり気が抜けない季節です。


それと同時に寄生虫による生産低下、斃死の増加となるワクモの被害が深刻化するのもこの季節から冬、春と続くのです。


今日は、多くの農場で聞かれる「ワクモ」について考えて見ます。


ワクモは養鶏での被害が大きい外部要因の一つですが、対策が十分でない場合鶏舎内に広がり昼夜問わず吸血し鶏が貧血してしまいやがて斃死するというものです。


ワクモ対策は農場独自の方法を取られていることでも有名でしょう。


一般的な薬剤散布による殺虫方法、ハーブを主成分としてワクモの吸血を防ぐ方法、石灰等粉や洗剤等の粘りを使用して活動を抑え込む方法、手荒い方法ですが火を使用して焼却する方法等あります。


しかし、いずれもある程度の効果はあるものの根治出来ず、結果元に戻り被害が継続するのが一般的です。


大変高価で有効性が高い薬剤も販売していましたが、そう期間がたたずに効力が薄れていくという耐性の問題もあり養鶏家の皆さんは日々情報を仕入れ良いものをお探しの事と思います。


ただ、くれぐれも農薬(農業用等明らかに動物向けでない薬剤の使用)の使用はされないようにしましょう。

家畜や畜産物に影響を及ぼすこともあり後々面倒になることもあります。

 

さて、そのワクモですがなぜ被害があると認識されているのでしょうか。
まず第一に斃死を伴う被害が甚大になることです。

重度の寄生が続くと貧血となり、食欲不振となり生産を中止し死亡するというものでほとんどの養鶏家は同じことを言われることでしょう。


また、病気感染の原因といわれます。免疫が低下することで鶏病に感染しやすくなり鶏舎内に蔓延したり、周辺鶏舎や農場へ被害を広げることもありましょう。


その他、鶏痘と呼ばれる顔や近辺が虫刺されのようにかさぶたができ、目が開けられないようになったりして鶏へのストレスが大きくなります。


このように、ワクモの寄生は養鶏の皆さんにとっては死活問題となるのです。


しかし、その対策方法はどれも決定打に欠け一定の効力はありますが持続が難しいのが実情です。

では、そのワクモをどのように対応していくのでしょうか。


一般的な薬剤殺虫を使用されている方が多いと思います。

私自身も最も効果的な対策と考えています。


一昨年あたりに販売された新薬を使用された方も多いと思いますが、最初は大変優れた効果があり月1回の使用で持続でき、まさに夢の新薬と呼ばれました。


しかし、使い方問題等もありすぐに抵抗力が付与され効果が減じてしまうという声も聞きます。


このように、薬剤の過剰な使用は抵抗力を付与してしまい、その薬効成分に対して効果を減じてしまうという基本的なことかもしれませんが、お困りの方々にはこれが実情であると思います。


また、濃度も重要です。一般的な薬剤は薬効成分500倍から1500倍で使用すると書かれています。

この場合薬剤を安く使用したい場合濃度を薄めれば1薬剤を複数使用できることも可能なのですが、残念ながら抵抗力をつけてしまう原因となります。
濃度は指定された濃度の濃い状態(この場合500倍となります)で使用すべきでしょう。

 

使用方法も重要です。
薬剤の繰り返し使用は多くの場合コリンエステラーゼ阻害作用があり1週間以内の反復使用はしないこと。と書かれているはずです。


しかし多くの農場は1週間に2回や3回、なかには毎日散布する方もいましょう。

どちらもメーカーは使用方法として推奨していません。


薬剤成分によりますが、薬剤中毒を起こしてしまう可能性もあり注意が必要です。


薬剤に関する問題を農林水産省所管の動物医薬品検査所で公開されていますので読みますと、ワクモ駆除を目的とした薬剤にはさまざまありますが、斃死を伴うような薬剤散布とワクモの寄生により健康状態が悪くなり斃死した場合と区別がしにくいこともありそんなことより、散布して被害を止めたいという考えもありましょう。


しかし、健康な鶏が重度の被ばくにより死亡する可能性もこの報告書にもありますので適正な期間に適切な濃度を使用するのが安全で効果的と言えます。

 

では、使用方法のうち注目する散布方法ですが、ここが問題を考える点となるかもしれません。
私自身も、散布のご指導を行い可能な限り有効な方法をご提案していますが、多くの農場は以下の要因により散布方法が不適切なことから結果抗体を獲得し長期にわたり被害が続く一つの要因と感じています。
1、散布を簡略化したことが中心で必要な個所への散布を行わない。
2、水溶剤ですので、電気系統への被害(漏電)を防ぎたいので散布個所を限定する。
3、安く作業するので薄い薬剤を使用して少量を散布する。
4、経営者と現場の温度差が激しく、作業の重要性が低く簡単作業で短時間で済ますような作業。
5、寄生虫による被害より人(作業時間や作業の労力が耐えられない等)の被害を防ぎたい。

多くの方はそんなことないと思うのでしょうが、重度の汚染が進んだ農場は上記のうちいずれか1つまたは2つ以上の理由によりやるべき作業が行われず結果抵抗力を獲得してしまうことが多いと感じます。

 

重要なのは、ワクモはどこにいて、どのように活動しているかになるのですが、
ワクモは日中活動せずゲージの裏側等物陰に隠れて夜間に活動します。しかし生息箇所が多くなると人が目視できるところでもコロニーを形成し潜んでいます。
重度の汚染となると、生息場所が目視できるもなにも関係なく潜み、昼夜問わず活動し鶏へ寄生している状態です。
この頃になると、鶏はトサカが白くなり貧血になっていることが分かります。

 

恐らく斃死が通常に比べ2倍又はそれ以上に近い状態で推移しており1ゲージに固まって死ぬこともありましょう。
また取り残した死亡鶏を繁殖地となり近辺の鶏に寄生続け周辺の鶏が固まって死ぬということもあるのです。


重度になった場合は正直、生息箇所を消毒するというレベルではありません。そんなことより全体を消毒しなければ対処できないという状態なはずです。
しかし、作業を簡潔に行い時間をかけない作業となれば十分でない消毒作業となり、先ほどのようにどんな新薬が登場したとしてもすぐに抵抗力を獲得してしまい、元に戻っていくことでしょう。

ですから、消毒方法を考えるには濃度や薬剤選定も大事なのですが、それ以外にもどこまで時間をかけて散布できるのか考えるのが重要です。

 

それ以外にも水洗中に温水を使用するのも効果的と言われます。しかしボイラー機能を使う農場は大変少ないもので、ほとんどは水になりましょう。
その水であっても十分に水洗することが出来れば温水に負けない効果が期待できます。


それは時間をかけて隅々まで洗浄することです。


しかし、そんな時間をかけるほど無駄な時間とお金はかけないと言う方もいて、温水を導入したり夜間も水洗できるようにロボットを導入する方もいましょう。
資金力があればそれも良いと思います。しかし結果が全てです。
それで効果があれば最高ですが、多くは現状とあまり変わらないというのが多いのではないでしょうか。
それは、十分に鶏舎からワクモを排除できていないということです。

 

農場によってコントロールが出来ている農場と残念な農場とある会社もあります。
私自身も視察して感じることですが、比較すると作業方法やその散布に今お話した考えを取り入れていることが分かります。

 

そのような比較が出来る幸運な会社であればその原因を考える良い機会でもあります。


しかし、多くの経営者はそんな比較をしない方も多いはずです。そのような比較は意味がないと言い比較をしません。
恐らく競争させることで人の問題があるからと推察されますが、そういう問題を直視できない場合は後々ご苦労されてしまうことが多いと感じます。

 

いかがでしょうか。
ワクモは基本的に繁殖が弱い時期には人に見えることがなく、重度になった場合鶏への被害、生産量の低下、斃死、免疫低下により農場常在ウイルスの罹患もあり悪い状態に陥ります。


それは、仕方ないと考えられればそれは解決でもありますが、多くの養鶏家は問題と考えます。それは鶏が死ぬということはその生産量が廃鶏するときまで少なくなったことを意味します。
10000羽で1000羽死んでしまってもヘンデー産卵率は90%、10000羽で9000個出荷しても90%です。
どちらが、良いのでしょうか。


通常ヘンデー産卵率は100%になることは経験から見てありません。
それは、鶏は24時間に1個産出しますが全ての鶏ではないのです。中には休産日があり中には完全休産しているからです。
ですから、10000羽のうち1000羽死んでも90%の生産はあり得ません。

ですから家畜を死なせる農場は問題と考える経営者がいるのです。
このためヘンハウス産卵率を見て農場の衛生管理状態を見ている方もいますし、ワクモ問題はヘンデー産卵率では大きな問題として見えるときは、生産量が著しく低下した時しかわかりません。

 

「結果は全てである」よく言われますが、ワクモ対策もまた同じです。


ですから、専門家に相談される方もいますし、養鶏年数の長いベテランに相談し解決策を考えることもありましょう。
いずれであっても、大事なのはどのようにワクモを退治するのかそこに時間とお金をかけることができるのか


そこの覚悟が解決への第一歩になると経験から見て言えることですし、助言して解決に向かった場合は喜びに感じます。


王道がないこの作業であり、いかに向き合えるかがポイントです。

 

最後に、ワクモ根治する作業全てに完全な解決方法は経験から見てありません。


しかし提案するとすれば、
1、水洗は本当に時間をかけて洗い流し、生息数を低減させることを第一に考える。
2、低減できれば、空鶏舎に時間をかけて多めの薬剤を使用し生息場所をなくしていく。
3、導入しても完全に根絶していないことを意識し、巡回し死亡鶏に付着している・巡回時長靴等衣服に付着がある場合は早期に全体を消毒する。
4、ひどくならないように、定期的に散布消毒し目視発見が出来なくても継続する。

これに限ると感じます。


私たち事務所もなるべく労力をおかけしないような方法を現場に即した提案していますが、皆さんも現場に合った方法を見つけて根治しにくい生物であることを第一に考えて頂くと解決できる道が見えてきましょう。

 

私たちの畜産に対する考え方を公開しております。是非ご覧いただき御社にとってなにができるのか考えるきっかけになればと思います。