nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

令和2年の餌付け羽数(1~3月)

令和2年1月から3月までの全国の餌付け羽数は、前年を上回る状況で
1月は9480000羽で、前年同月比104.5%増となりました。
2月は7992000羽で、前年同月比102.6%増となります。
3月は9532000羽で、前年同月比112.3%増となります。

 

経済背景ですが、一昨年12月は最需要期にもかかわらず相場下落があり、新年相場が心配されていたころでした。
昨年初市は東京M基準値100円という低相場となり、成鶏更新・空舎延長事業が発動されました。
全農等は適正な生産量のための調整を依頼する等業界内で羽数の減少に取り組む風潮が浸透した時期です。


その相場安は夏まで続き、台風等災害により主力産地千葉県での損害が顕著になることで供給不安が生じ、相場高へと潮目が変わります。


この流れは、本年まで続き新型コロナウイルスの影響もあり外食・加工向けは低調も家庭消費(巣ごもり消費)が堅調に推移したこと事から、安定した相場展開となりました。


しかし、家庭消費が頭打ちとなり外食等加工向けが低調であることが長いことから、相場は季節特有以上の強い低下を示し現在に至ります。


足元では餌付け羽数は昨年夏以降の相場高・供給不安定の解消も重なり順調に餌付けを増やし始めます。


外食や中食等加工も年始は堅調でしたので、家庭消費とのバランスも良く順調な需要展開でしたが、2月ごろより世界での新型コロナウイルスの影響がある報道が散見されます。


日本では3月から訪日観光客を中心とした業態に影響が見られ始め、4月は緊急事態宣言発令もあり全国的に外出をしない「ステイホーム」状態となります。


このことで、経済は急激に低下を示し人々は最低限の出費をすることで、外食等経済を反映する大口需要先が一気に活動縮小を余儀なくされ、需要が供給とのバランスを失い始めます。


4月上旬ぐらいまでは家庭消費(テーブルエッグ)が加工向けを吸収するくらいの需要がありました。
しかし、外食等の需要が更に弱くなると家庭消費だけでは吸収できず相場下落という展開に至ります。


5月の大型連休以降も相場下落は続き、全農等は適正な生産量を業界にお願いするという流れになります。

現在、39の県では緊急事態宣言が解除されました。経済活動が再開されますが、他県をまたぐ移動は自粛されており、なお回復に時間を要する可能性もあります。

 

消費に大きく貢献するといわれる首都圏、大都市圏の方々はまだ特定地域に残されており活動できない状況です。

 

すでに今回の影響による企業倒産も相次いでおり、インバウンドや観光需要を期待している方々は大変ご苦労されているようです。

 

さて、全国的に餌付け羽数が増えていることはデータから見て分かりました。
細部を見て見ましょう。

 

採卵鶏の生産量は1位茨城県、2位千葉県、3位鹿児島県と並びます。(平成31年データより)


2・3位の順位入れ替えがあるものの概ねこの3トップは不動のものになります。


また、飼養羽数は関東が最も多く48077000羽とほか地域を寄せ付けない圧倒的な羽数になります。


総生産量(羽数)は全国を100としておよそ30%となりその中に茨城、千葉県と主産地が上位を占めています。


理由として、養鶏に適した地域であると同時に首都圏に近く消費人口が多い地域への輸送が容易であることがあげられます。


次に多い地域は東海、東北、九州、中国と並び概ね各24000000羽程度となり関東の半分となります。
総生産量から見れば各地域全国の12,13%を担う立場となります。


北海道は6657000羽で主に道内で消費されますが近年は東北等本州への移動も見られます。

沖縄は1356000羽で、県内で消費され不足分は本州から移動されているとみられます。

 

では、主産地の餌付け状況を見ます。
第1位の茨城県は令和2年1~3月の前年比増加は103.3%となります。
第2位の千葉県は同111.5%増加、3位鹿児島県は119.3%となります。
全国平均は106.6%となります。


先ほどの通り、主産地は関東でその生産量は全国の3割を占めています。
千葉、茨城以外の関東では、栃木131.4%(期間中の餌付け羽数774千羽で茨城県の餌付け51%程度)


群馬113.8%(同2312千羽、茨城比較154%)、

埼玉92.9%(同784千羽、茨城比52%)
神奈川95.8%(同23千羽 茨城比1.5%)となります。

(東京は8千羽程度なので省略しました)

 

参考までに期間中の茨城県は1493千羽、千葉県は1612千羽となります。


これを見ますと、主産地茨城、千葉に並び群馬が健闘していることが伺えます。
大都市圏は一大消費地でもあり最低賃金が高く消費意欲が高いとされます。


このこともあり、関東で新たに開場する農場も見られ混戦模様になります。
同時に1農場の飼養羽数も増加しており施設の大型化も進んでいます。


このこともあり小規模展開している農場は、引き取り先との兼ね合いから少しづつ減少している現実もあります。

 

令和2年の最初は、新型コロナウイルスの影響を加味した餌付けをされているところはなかったと思います。
むしろ、生産量を増やすことで安定した供給を第一に展開されていたことでしょう。


しかし、この経験したことのない影響は急激な不況となりつつあり、世界恐慌を超えるともいわれる状況です。


いち早く景気に敏感な業態から影響を受け始めあらゆる産業へと波及し始めています。


このため、需要量の半分(少し前までは51%と半分を超える)を外食・加工が消費していたのですが急激に不需要となり、家庭消費に助けられ何とか需要と供給がバランスを取れていたといえました。


その家庭消費も一息つき、新たな消費先が見つからないまま5月の下旬に入っている状況です。


このこともあり、適正な生産量のための協力を求めている昨年と同じ構図になっているようです。


まだ、成鶏更新・空舎延長事業は発動されてはいません。
6月から学校給食に一定の引き合いもあり7,8月も期待されています。(夏休みの短縮措置)


しかし、家庭需要は例年通り弱くなり、外食が経済動向次第で回復が遅れる可能性は消費の減退に直結され心配です。


夏の災害も心配され、資金力が弱まるところで災害による強烈な出費も想定され経営の持続にネガティブな要素も加わります。

 

今後生産調整が進むかはまだ不透明です。


明日廃鶏して売上げを下げるという選択をする農場は多くはないと言えます。
通常の廃鶏処理、強制換羽による生産量の調整で秋口への期待をする等特別な動きは期待できないと思います。


足元の相場安もジワリと進行することは例年の通りでもあり、今は我慢する時と多くの農場は思われることでしょう。

 

今後の餌付け状況によっては供給過剰となり、経済状況次第では需要低迷により大変な時代が訪れる可能性もあります。


経済の低迷は、餌付け羽数を大きく引き下げてもなお、需要が持ち上がらないということもあります。


それだけ外食等に依存している状況では、世界恐慌を超えると言われる今回の影響をどこまで和らげることが出来るのか国の手腕が問われます。


V字回復を目指す日本政府ですが、多くの経済エコノミストはL字回復になるのではと心配している声もあります。


それだけ、経済が弱くなり大企業に依存している中小企業の影響を心配しているということでしょう。
実際半分以上の労働者は中小企業に在職している現実があります。

 

その方々が、畜産物をはじめ消費をしている現実。


私たちもできうることは何でもやる覚悟が必要なのかもしれません。