nogutikusan’s diary

畜産と共に歩む20有余年、今の養鶏の課題や考えをお伝えします。 のぐ地久三事務所養鶏部公式ブログ

ゲージフリー鶏卵の普及が進んでいます 安いだけの鶏卵と2極化が進んでいくのでしょうか

アニマルウェルフェアという言葉が、普及して久しくなりました。 この間、大手や中堅の養鶏場はこの新時代を見極めて改造し、ゲージフリー化を進めた農場もあります。 大規模流通店舗や外資系流通店では、本国からの意向もあり普及を進めていく傾向も見られます。 また鶏卵販売価格の価格差が小さくなり、高品質であっても価格設定が可能で消費者に認知されやすさが後押しして少しづつ普及しているようにも見えます。 外資系倉庫店では、ゲージフリー鶏卵の取扱いを以前から調査し見ていましたが、関東では初めて千葉県でも取り扱っていることを確認し広がりを見せているように感じます。 千葉県では、北総地域の鶏卵を主に取り扱っていいましたが、今回この他に、九州地方産のゲージフリー鶏卵を見ることができました。 価格差はレギュラー卵より1個10円程度高い状況です。 少し前は、1個当たりの価格は平均40円程度と高め設定が一般的でしたが早くも価格低下が進んでいます。 1個当たりレギュラー卵は22円、ゲージフリー鶏卵は33円と差がなくなっています。 その理由に設備改造は必要ですが、新築鶏舎ではなく既存を変更しており建設コストが著しく高いというわけではないということや、ゲージフリー鶏卵は引き合い先が、アニマルウェルフェアといった次の時代を見据えた戦略にマッチングしており、安定した取引先となっていることも大きな要因です。 今後も、ゲージフリー鶏卵へと切り替える農場も多くなるとはいえないことから、すでに変更して事業を行っている農場にとっては既得権(ゲージフリー鶏卵といえばこの会社というイメージ)がつき、更に有利に進んでいくと思われます。 また今は、関東に数社がこのゲージフリー鶏卵を生産し納品していますが、それでも不足していることから、今回九州地方の鶏卵を納品していることから関東の消費は関東周辺の農場とは限らないという可能性もあり、後発組の参入が阻まれる可能性を示しています。 業界動向から見ますと、ゲージフリー鶏卵といったアニマルウェルフェアへの対応さらに鈍くなっています。 その理由に、高額な建設コストや高価格帯の鶏卵に消費者がどのように反応するのか読み切れないといった納品先の判断、配合飼料価格といったコストの大幅な増加で余裕がないという状況もあります。 ですが、世界的にはアニマルウェルフェアへの流れは進んでいくことは避けられず、ガラパゴス化してバタリーで鶏卵を生産し日本国内で経営できれば良いということはできません。 その理由に、インバウンド観光で国内を潤う戦略もあります。 外国で普及している制度がない日本で、観光誘致することは難しいと言えます。 EUや経済重視のアメリカでもバタリーを新規設置の取りやめが進んでいます。 それだけ世界では流れが変わっているということです。 鶏卵を輸出している量は9650万トンで、相手国は香港が全体の96%、台湾2%、シンガポール1%未満、アメリカ(グアム)0.02%となります。(令和元年) いずれも、生で喫食できることや、日本食を知り購入したい購買層、在日本人が挙げられますが、さらに輸出が拡大できると予測されるにしても、世界的に見て生食が進んでいない文化が多いことから、生食できるほどの安全性を重視しているとは言えません。 また、世界各国に現地生産農場を展開し日本と同じ衛生管理で生産させる農場も存在しますので、安全な鶏卵は輸出で安泰とはならないのが大方の見方になります。 業界内の課題とされる、経済的理由や衛生面を理由にしても世界から見て納得を得ていないのも事実として受け入れなければなりません。 外食先は多くは仕入れ価格に意識を向いており、ゲージフリー鶏卵は必ずしも必須ではないと感じますが、宿泊業は高額施設ほど、今後影響を受ける可能性もあり国内販路に変化が訪れるかもしれません。 小売店は、大規模ほど国際的なつながりがある店舗では、その影響を受けるようになると考えています。 すでに外資系は導入を進めており国内系も平飼い等を取り扱ってはいますが、それ以外にもバタリーからの転向組からの鶏卵としてゲージフリー鶏卵を取り入れるとみられます。 中規模小規模ほど、大規模流通店舗の影響を受けやすい(仕入れ価格や顧客争奪等)時期に入っており、店舗の廃業や大規模店舗への譲渡も見られますので、既得権がある店舗へ統合された場合、販路の維持が心配されます。 大規模店舗はネットスーパーも展開しており、買い物への利便性を訴求し顧客を増やす戦略をとっているところもあります。 まだネットスーパーに利益を見込むと考える小売店は少ないのでしょうが、今後国内の高齢化や買い物困難者、買い物への時間節減といった広い層に良い影響を与え、やはり先行開業し知名度をもっとものが制することになるのかもしれません。 生産農場はいかにそのような勝ち組に乗れるのかが生き残りのカギになるのでしょうが、まずは顧客が求めるものに対応できていなければ何もできず、何も変わりません。 安い商品は中堅以下の店舗で取り扱うのでしょうが、中堅店舗は生き残るため知恵が必要になると感じます。安いだけを訴求してどこまで消費者に認知されるのかはわかりませんが、大手はすでに先行した既得権があるため新参組の隙があるかわかりません。 ゲージフリー鶏卵の他にも、品質を前面に出す商品もあります。 農場HACCP認証のある商品やJGAP商品も品質重視の商品として認知されると思います。 今後小売店側も、安さ、安心できる品質、世界標準の品といった様々な選択から選んでくるでしょう。 ですから、いつまでもお金がないから改造しない、できない。 安心できる商品を提供できる、認証そのものが無駄でできない。 安全のためにバタリーは存続し、世界は世界と認識しなければならない。 そういう選択が、生産者にありますが道を誤ると販路先の影響や、販路の先細りもあるかも言しれません。 優れた経営者は未来を見てどのように感じ行動をするのでしょうか。 ただ鶏卵があればよいという時代が静かに幕を引こうとしているのかもしれません。